2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of new biomarkers for malignant glioma using next-generation sequencer
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17K16660
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
嵯峨 伊佐子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (50445219)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | T細胞受容体 / グリオーマ / 脳腫瘍 / 腫瘍免疫 / レパトア解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性神経膠腫は、集学的治療の進歩にもかかわらず、平均生存期間15ヵ月の非常に予後の悪い腫瘍である。免疫療法は最も期待される治療法のひとつであり、近年、多くのがん種において、有効な成績が報告されている。一方、悪性神経膠腫に対する治療成績は必ずしも良好とはいえない。これは、中枢神経系という特殊な免疫環境が関与しており、従来の抗腫瘍メカニズムが作用しない所以だと考えられている。 当施設において治療された神経膠腫30例の腫瘍検体、血清を対象とし、次世代シークエンシング法による網羅的なT細胞受容体(T Cell Receptor : TCR)レパトア解析を行った。グレード4(膠芽腫)15例、グレード3(退形成性星細胞腫、退形成性乏突起膠腫、退形成性乏突起星細胞腫)7例とし、コントロールとしてグレード2(星細胞腫、乏突起膠腫、乏突起星細胞腫)8例をおいた。増幅しているTCRを定性的、定量的に解析し、アルゴリズムに基づいてClonality, Diversity Indexを算出したところ、悪性神経膠腫においてTCRの多様性が低下していることが明らかとなった。さらに、同一症例の異なった時期、化学療法の前後での検証を行うため、4検体の追加検査を行った。同一症例であっても、治療の有無、再発によって、発現するTCRの種類、Clonalityに変化が生じることが分かった。また、臨床経過の良いものにDiversity Indexが低い傾向が示唆された。 TCRレパトア解析でのTCR多様性の低下、特定T細胞の活性化は、複数のがん種で予後との相関を示すとの報告が見られる。本研究での結果は、特殊な免疫環境における脳腫瘍でも、他がん種同様の反応が期待できることを示している。本研究によって、悪性神経膠腫の免疫機構の一端が解明されることにより、ペプチドワクチンをはじめとした免疫療法の改良、開発の足掛かりとなった。
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