2017 Fiscal Year Research-status Report
グリオーマ幹細胞の免疫抑制能を標的とした新たな治療方法の検討
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17K16665
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山室 俊 日本大学, 医学部, 助手 (30790886)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膠芽腫 / 悪性神経膠腫 / 神経膠腫幹細胞 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性神経膠腫の治療抵抗性に強く関与している glioma stem cells (GSCs) の免疫抑制機構を知ることで、新たな治療方法を開発すべく本研究を開始した。本年度の研究では主にヒト悪性神経膠腫細胞株 U-251MG を用いた実験を行った。U-251MG を無血清培地で培養することで、sphere が形成され、未分化性のマーカーである Nestin や Nanog の発現が上昇することが確認された。発現の解析は mRNA およびタンパクについて行い、それぞれ RT-PCR および Western blotting を用いた。 U-251MG を無血清培地で培養した細胞株を Rev-U-251MG とし、GSCs 様の細胞株として扱った。Rev-U-251MG について、 indoleamine 2,3-dioxgenase (IDO) の mRNA およびタンパク発現を解析し、元の U-251MG における発現と比較したところ、発現の上昇が認められた。IDO は癌細胞に多く発現するタンパクであり、自己免疫を抑制していることが知られている。そのため、GSCs は通常の悪性神経膠腫細胞よりも多くの IDO を発現することにより、より強い免疫抑制能を示すことが分かった。GSCs において IDO の発現が上昇していることを示した報告は今までになく、新たな悪性神経膠腫治療の標的を模索するうえで、重要な知見である。 さらに、Rev-U-251MG に悪性神経膠腫治療に用いられる interferon-beta (IFN-β) を投与し、IDO の発現におよぼす影響を検討したが、投与により IDO の発現がさらに上昇してしまうことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より計画していた研究内容において、下記の如く一定量の結果が既に得られており、現在第一報として論文を作成中である。現在進行中の研究において、培養条件を変更することによりヒト悪性神経膠腫細胞株 U-251MG が sphere を形成し、Nestin および Nanog の発現が上昇することを確認した。この細胞株を Rev-U-251MG とし、glioma stem cells のモデルとして使用した。Rev-U-251MG について、 indoleamine 2,3-dioxgenase (IDO) の mRNA およびタンパク発現を解析し、元の U-251MG における発現と比較したところ、発現の上昇が認められた。さらに、Rev-U-251MG に悪性神経膠腫治療に用いられる interferon-beta (IFN-β) を投与し、IDO の発現におよぼす影響を検討したが、投与により IDO の発現がさらに上昇してしまうことが分かった。現時点までに得られたこれらの研究成果を元に論文作成を開始しており、投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を計画した際に最も重要視していた indoleamine 2,3-dioxgenase (IDO) と glioma stem cells (GSCs) の関係性については、概ね予測していた通りの結果を得ることができている。その中で、IFN-β の効果についても研究を行ったが、当初の予想とは反対の結果が得られた。そのため、今後は IFN-β と他種の薬剤を組み合わせることで、IFN-β が悪性神経膠腫の免疫機構を標的とした治療方法を考えるうえで及ぼす負の作用を打ち消し、本来の抗腫瘍効果を引き出すことができないか、研究を推進していく。また、研究結果をより確実なものとするため、U-251MG 以外のヒト悪性神経膠腫細胞株細胞株を用いた追証実験や、IDO の knock out 試験なども計画している。さらに今後は、GSCs において IDO の発現が上昇する機序を解明することにより、GSCs の自己免疫抑制機構を標的とした新たな治療方法の確立を目指していく。
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Causes of Carryover |
本研究は、複数のヒト悪性神経膠腫細胞株を用いて行う予定であるが、当該年度には1種類のヒト悪性神経膠腫細胞株(U-251MG)の購入、使用に留まっている。U-251MG 細胞株を用いた研究において当該年度内に一定の研究成果が得られているため、次年度に他のヒト悪性神経膠腫細胞株を購入し、研究を継続する。得られた研究結果をより確実なものとするために、次年度では同様の実験系を複数のヒト悪性神経膠腫細胞株を用いて繰り返す必要があり、当該助成金を使用していく。また、当該年度は学会発表および論文投稿がなされなかったが、次年度には現時点までに得られた研究成果を国際学会(Society of Neuro-Oncology)や、国内学会(日本脳腫瘍学会等)で研究成果を発表する予定であり、当該助成金を使用する。さらに、現在作成中の論文を投稿予定であり、英文構成や投稿料として当該助成金を使用する。
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