2017 Fiscal Year Research-status Report
成熟骨芽細胞移植による骨折治癒促進機序の解明と新規治療法開発への応用
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17K16677
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤田 浩二 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科整形外科学, 助教 (80451970)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 成熟骨芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は計30例の被験者からヒト成熟骨芽細胞を採取した。細胞数は1*10~6個、採取した細胞の質をRNA integrity number(RIN)で評価したところ、RIN>8であり、細胞数、質双方で今後の移植実験に使用可能であると判断した。続いて、採取したヒト成熟骨芽細胞および骨芽細胞様cell lineを用いて、人工骨および脱細胞羊膜への吸着実験を行った。シリンジによる陰圧付加後、培養皿内で培養する手技により良好な吸着を認め、今後の移植実験に使用可能であると判断した。さらに吸着率を高める手技の検討を並行して行っている。次に、ヌードラット骨折モデルを作成し、骨折部に担体に吸着したヒト成熟骨芽細胞を移植する実験を開始した。実験結果の解析は今後行う予定である。
また、ヒト成熟骨芽細胞の移植に際して、被験者の既存疾患が細胞移植後の骨形成、骨折治癒に影響を及ぼす可能性があると考え、今回の実験で採取したヒト成熟骨芽細胞のうち、糖尿病患者群と非糖尿病患者群について、その遺伝子発現を検討した。マイクロアレイ法及びリアル・タイムPCR法による検討、パスウェイ解析により、糖尿病患者の成熟骨芽細胞では特定の遺伝子群の発現上昇を認めた。本結果は、ヒト成熟骨芽細胞採取時に被験者の基礎疾患を考慮するべきであることを示唆するだけでなく、糖尿病による骨質低下の原因解明につながる可能性があると考える。今後ヒト成熟骨芽細胞の培養実験(高グルコース条件や終末糖化産物付加)により、細胞内機序の解明を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト成熟骨芽細胞の採取は予定どおり順調である。担体への吸着実験、ヌードラット骨折モデルの検証も当初の予定どおりである。 今年度の検討で、糖尿病が骨芽細胞の遺伝子発現に影響を与えていることを偶然発見した。 今後検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ヒト成熟骨芽細胞移植による骨折癒合速度を従来治療法と比較し、機序を明らかにする ヌードラット骨折モデルにヒト成熟骨芽細胞を吸着した人工骨を移植する。整形外科手術で広く使用されているヒト自家骨移植術をコントロール群として、骨形成速度の比較をレントゲン、マイクロCTを用いて行う。さらに、骨癒合した骨折部の組織学的検討、遺伝子発現解析を行い、その分子生物学的機序を明らかにする。従来の治療法である自家骨移植と比較して、本法でより早く、確実に骨癒合が得られるかを検証する。
2.糖尿病による骨形成低下、骨質低下機序の解明を行う。今年度の検討により、糖尿病が骨芽細胞内の遺伝子発現を変化させていることが判明した。今後培養系を用いて、遺伝子発現変化の機序と、その影響を検討する。
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Causes of Carryover |
ヒト成熟骨芽細胞の手技が安定し、施行回数を減らすことができた。 検証実験の結果が良好で、当初予定していた検証実験の回数をへらすことができた。 これらの予算は、糖尿病患者から検体採取とその遺伝子発現検討に使用する予定である。
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