2019 Fiscal Year Research-status Report
ヒト滑膜・軟骨細胞における細胞膜イオンチャネルを介した関節症疾患治療戦略の構築
Project/Area Number |
17K16690
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
熊谷 康佑 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50649366)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / 関節リウマチ / 滑膜細胞 / 軟骨細胞 / 細胞膜イオンチャネル / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
関節変性疾患(変形性関節症(OA)や関節リウマチ(RA))は罹患者の生活の質を著しく損なっている。特に膝関節疾患に関しては軟骨再生治療や関節リウマチの病因解明が待たれるところである。現在も臨床上多くの治療法が行われているが、その治療の軸はやはり人工関節置換といった関節自体の再生ではなく代替療法(置換療法)であり、軟骨損傷に関しては培養軟骨移植等新規治療も広く行き渡ってはきたが、その長期成績は未だ不確定である。我々は、関節変性疾患の病態には軟骨や滑膜といった関節構成成分の機能破綻の寄与が大きく、その原因究明には恒常性維持機構の解析が必要であると考えており、予てより研究を継続してきた。本研究では以前より解析を進めてきた細胞膜イオンチャネルに着目し、関節構成成分の恒常性維持に関与する標的チャネルの分子実体の解明、疾患特異的に関与するmicroRNA (miRNA)の同定を目的としている。 実験手法としては前年度に引き続き手術時に採取したヒト膝関節軟骨/滑膜から培養細胞を作成しそれぞれの実験に使用している。また引き続き関節液の浸透圧やサイトカインの測定も並行して行っている。 培養細胞から網羅的miRNA発現プロファイリングを行い、その結果から、疾患特異的なmiRNAを同定、検証する。これに関連する培養細胞の軟骨増生機能や滑膜増殖能についてサスペンションアレイシステムによるサイトカイン、成長因子、転写因子の網羅的解析を行う。現時点では滑膜に関してマイクロアレイ・ELISA解析を行い、その結果よりいくつかのイオンチャネルに標的を絞り、PCR法にて発現解析を継続して行っているところである。これらの結果に過去の文献的考察を合わせ原因遺伝子候補の選定、疾患修飾因子の関与を検討予定である。パッチクランプ実験や既存結果の解析については次年度以降に実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト膝関節滑膜由来培養細胞に関してはすでにマイクロアレイ・ELISA解析を行い、その結果より現在候補となるイオンチャネルに標的を絞っている段階である。ただしすでに数回のPCR実験を行っているが、現時点では標的イオンチャネルの確定は出来ていない。関節液に関しても浸透圧測定を含め多面的に解析を行い、あらゆるパラメータとの相関関係を確認している途中である。 現在までの実験にて当初の目的はある程度遂行できているが、今後は過去の文献を参考に遺伝子の候補を選択し、その後疾患修飾因子などのパラメータを組み込む予定としている。 パッチクランプ実験や既存結果の解析については次年度以降に実施する予定である。英国Liverpool大学を訪問しての共同実験やデータ解析に関してはコロナ肺炎流行による渡航制限の影響もあり次年度に再度計画を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの研究結果より明らかにした各種イオンチャネルの容積変化(浸透圧変化)に対する反応結果を解析し、これまでのマイクロアレイ等による網羅的解析の結果との相関を確認し、疾患原因遺伝子の同定を目指す。現在までのPCR検査では原因遺伝子の確定は得られておらず、今後は周辺環境を加味し候補遺伝子の範囲を拡大し検証を行っていく予定である。以上の結果より最終的にはRA/OAにおけるチャネル阻害剤等各種薬剤に対する反応を数値化し、客観的且つ定量的に評価し(シミュレーション)モデル化を目指す。細胞シミュレーションモデル作成に関しては滋賀医科大学整形外科学講座・細胞機能生理学講座の協力の下、申請者自身が行う予定である。またLiverpool大学のRichard Barrett-Jolley博士のグループと協力しデータの解析、他施設を含めた研究者間での共用化に関してシステム構築を行っていく予定としている(現在の渡航自粛要請が解除された後に再度計画を行う予定である)。これらのデータを集計し、シミュレーションモデルに応用を行う予定である。現時点では細胞外環境変化(細胞周囲の浸透圧変化、運動療法等のメカニカルストレスや薬物(ステロイドや鎮痛剤(NSAIDs)刺激等))に対する生理的応答を各種イオンレベルで解析できるシステムを確立することを目標とする。
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Causes of Carryover |
現在までの研究においてPCR/ELISA実験における抗体やプライマーの購入に実験費用を使用したが、整形外科学講座の他の研究者と共に実験を行なった結果、自己使用分に関しては予想分より低く抑えることができ、繰越金が発生する結果となった。さらに英国リバプール大学訪問のために渡航費の計上も行っていたが、現在の新型コロナ肺炎の流行による渡航自粛要請もあり余剰分が生じる結果となった。 これらに関しては次年度に向けきちんと予算配分を確認し使用する予定である。 (使用計画) 研究結果報告の為の学会発表や論文作成、また発表に伴う経費としての利用増加が予想される。すでに一部結果に関し研究発表や論文作成を予定しており、必要に応じて追加実験等に使用する予定である。 また、研究について共同実験やミーティングを行う目的にて再度英国Liverpool大学を訪問する予定である(現在の渡航自粛要請が解除された後に再度計画を行う)。
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