2018 Fiscal Year Research-status Report
患者皮膚から誘導する神経膠様細胞を用いた難治性疼痛に対する移植治療
Project/Area Number |
17K16718
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村上 徹 東北大学, 大学病院, 助教 (90756248)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経障害性痛 / 神経再生 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は難治性の末梢性神経障害性痛に対する治療法の開発であるが、これまでの最大の問題点は、現存する動物モデルではシュワン様細胞移植などの新規再生医療の治療効果を判定できないことであった。そこで昨年度はラット坐骨神経を一定の時間(10分間)、一定の力(60g)で圧迫することで神経障害性痛を約4週間引き起こすラットモデルの開発に成功し、アロディニアや痛覚過敏の出現を行動評価で確認し、脊髄や後根神経節で神経障害性痛に合致するタンパク発現を観察したが、今年度は各種鎮痛薬に対する反応を観察した。坐骨神経クリップ2週間後において、神経障害性痛患者に効果があるとされるガバペンチン及びヂュロキセチンを腹腔内投与したところ、著明な鎮痛効果を示した一方、侵害受容性痛に効果を示すジクロフェナクは効果を示さなかった。これは本ラットモデルが神経障害性痛の病態を表現しているモデルであることを支持した。 一方、細胞移植実験として昨年度ラットシュワン細胞を障害部位に移植したものの当初の予想と異なり、明らかな効果を示さなかった。原因検索として圧迫1週間後の坐骨神経を軸索マーカーであるニューロフィラメントの抗体を用いて免疫組織化学を行なったところ軸索の障害は認められなかったため、神経組織の損傷が少なく、約4週間で自然治癒する弱い神経障害であったことで投与した細胞による効果を検出できなかった可能性が考えられた。そこで、より強い120gのクリップを用いて坐骨神経圧迫モデルを作成したところ、10分間の圧迫で痛覚過敏が6週間持続し、圧迫後1週間の坐骨神経では圧迫部位以遠でニューロフィラメント及びミエリンマーカーであるMBPの発現が低下しており、軸索障害及び脱髄をきたしていることが確認された。次に圧迫直後にラットシュワン細胞を移植したところ、移植5週後において細胞非移植群と比較して有為な痛覚過敏の改善が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始時の最大の問題点として、現存する動物モデルではシュワン様細胞移植などの新規再生医療の治療効果を判定できないため、新規動物モデルの作成に時間を要した。その後の研究は概ね順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
再生医療の評価に適した動物モデルについては適切な条件を見出せているので、今後は当初の計画どおり誘導シュワン細胞を用いた実験を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画からやや遅れており、細胞誘導実験を行なっていないため、次年度使用額が生じた。次年度は細胞誘導のためのサイトカインが必要となるためこれらを使用する予定である。
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Research Products
(3 results)