2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K16731
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西本 れい 岡山大学, 大学病院, 医員 (60789585)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミクログリア / イオンチャネル / 温度感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、低体温療法の脳保護作用の分子基盤を明らかにするため、中枢神経系のグリア細胞であるミクログリアに発現する温度感受性分子を探索し、同定することである。本研究計画において、マウスミクログリアの動きに温度依存性があること、マウスミクログリアにはいくつかの温度感受性TRPチャネルが発現することをすでに見出していた。平成29年度は、すでに見出した候補である温度感受性TRPチャネルTRPM4について、解析を行った。TRPM4活性化阻害剤として市販されている9-phenanthrolの作用選択性について、パッチクランプ法で検討したところ、他の温度感受性イオンチャネルの活性も抑制することがわかった。現在までに選択的なTRPM4活性化阻害剤は見つかっていないため、TRPM4の活性化がミクログリアの温度依存的な動きに関与していることを薬理学的に証明することは困難であると考え、遺伝子ノックダウンを検討した。単離培養マウスミクログリアに対してRNA干渉法を用いてノックダウンを行い、タイムラプスイメージングを用いてミクログリアの動きを比較したところ、コントロールと比較して動きに有意差は見られなかった。この理由として、RNA干渉法の手技自体がミクログリアの状態に悪影響を及ぼしている可能性が考えられた。また、申請者は、個体レベルでミクログリアの動きの温度依存性について検討するため、ミクログリア特異的に蛍光タンパク質のGFPを発現しているマウスを用いて、生きているマウスの脳温度を変化させることができ、かつミクログリアの動きを2光子励起顕微鏡で観察できる実験条件を検討し、確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定であった単離培養ミクログリアを用いたTRPM4の発現同定について、TRPM4活性化阻害剤の作用選択性の検討実験及びRNA干渉法の試用及び発現検討に予想以上の時間が必要であったため、特異的抗体を用いた免疫染色によるタンパクレベルでの発現検討が着手できなかったことが、当計画がやや遅れていることの理由にあげられる。また、当初の予定では個体レベルでの検討は平成30年度以降に計画していたが、申請者が発見したミクログリアの温度依存的な動きについて個体レベルで観察検討するため、生きているマウスを対象とした2光子励起顕微鏡によるリアルタイムイメージングの実験系の構築を平成29年度に開始したため、一部実験計画を変更したこともその要因にあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
TRPM4がミクログリアの温度依存的な動きに関与することを明らかにするため、当初の計画ではRNA干渉法を用いて、TRPM4の遺伝子発現を選択的に抑制し、ミクログリアの動きを観察検討する予定であった。しかしながら、RNA干渉法では細胞の状態が非常に悪くなり、動きを観察する実験には適さないと判断したため、今後の計画では、代替案として (1) アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた個体レベルでの遺伝子ノックダウン、あるいは (2) Cre-loxPシステムを用いた遺伝子欠損マウスの作成を検討する。申請者はすでに温度条件を可変できる2光子励起顕微鏡を用いたリアルタイムイメージングの実験系を確立したため、個体レベルでのミクログリアの動きの検討をすすめる予定である。加えて、野生型マウスを用いた蘇生後脳症モデルを作成し、TRPM4の発現様式の検討や異なる温度環境下でのリアルタイムイメージングを用いたミクログリアの動きの解析を行う。2光子励起顕微鏡を用いた実験は、研究協力者である富永真琴教授(生理学研究所、愛知県)の協力のもと進める予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、免疫組織学的実験を行うことができなかったことから、当初予定していた平成29年度の動物購入費及び飼育費が不要となった。そのため、平成30年度に繰り越し費用が生じており、予定していた免疫組織学的実験のために使用することを計画している。 平成30年度では、平成29年度に着手できなかった免疫組織学的実験に加え、マウスを用いた蘇生後脳症モデルの作成、遺伝子ノックダウン実験を行う。それらに関係する動物購入費及び飼育費、実験に使用する消耗品に使用する。また、遺伝子ノックダウン実験がうまくいかなかった場合には、遺伝子欠損マウスの作成に着手する計画である。
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Research Products
(2 results)