2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K16749
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
藤本 陽平 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (90779430)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アセトアミノフェン / ノルアドレナリン / セロトニン |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の予定としてラットに対し脊髄マイクロダイアライシスと脳マイクロダイアライシスを同時に行いノルアドレナリン・セロトニンの経時的変化を観察するとしていたが、試行を繰り返したものの脊髄・脳で同時に有用なデータを得られる確率が低く研究の効率が上がらないこと、また別の実験系として自由行動下でアセトアミノフェンの鎮痛レベルを確認する必要があることから、まずは自由行動下に脳マイクロダイアライシスを行い、下降性疼痛抑制系に関与する脳内モノアミン動態に関するデータ取得を優先することとし、そののちに脊髄でのデータを付随的に得る方針とした。まず前処置を行わないノーマルラットに対し、アセトアミノフェン投与時の青斑核ノルアドレナリンの経時的変化を観察する実験を開始した。ノーマルラットにおいてin vivoマイクロダイアライシス法を用いて青斑核ノルアドレナリンの細胞外濃度を測定したがアセトアミノフェン投与を行っても細胞外濃度に大きな変化がないことを確認した。次に炎症性疼痛モデルとして足底にカラジーナンを皮内注射したラット(炎症性慢性疼痛モデル)を作成し、上記と同様に青斑核ノルアドレナリンの細胞外濃度を測定した。アセトアミノフェン投与によりノルアドレナリンは10-20%程度の増加を認めたが、有意な変化と取るには動物数と時間が必要であることから他の実験系の実験を優先することとした。上記実験よりアセトアミノフェン単独での脳内ノルアドレナリンへの効果は少なくとも限定的であることが示唆された。一方で、並行して行っている縫線核でのin vivoマイクロダイアライシス法によるセロトニン測定に関しては、上記の炎症性慢性疼痛モデルにおいて、数が限定的であり確定的なことは言えないが細胞外セロトニン濃度の上昇を認めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定としてラットに対し脊髄マイクロダイアライシスと脳マイクロダイアライシスを同時に行いノルアドレナリン・セロトニンの経時的変化を観察するとしていたが、試行を繰り返したものの脊髄・脳で同時に有用なデータを得られる確率が上がらず、研究の効率が上がらないこと、また別の実験系として自由行動下でアセトアミノフェンの鎮痛レベルを確認する必要があることから、脊髄および脳内の同時マイクロダイアライシスは中止し、まずは自由行動下に脳マイクロダイアライシスのみを行い、下降性疼痛抑制系に関与する脳内モノアミン動態に関するデータ取得を優先することとした。ノーマルラットおよび炎症性疼痛モデルラットに対して自由行動下での青斑核マイクロダイアライシスを行うことによりアセトアミノフェンのノルアドレナリン系下行性疼痛抑制系への関与について調査研究を行った。その結果から、正常・慢性炎症性の疼痛モデルにおいて、アセトアミノフェン自体には青斑核におけるノルアドレナリン系神経に対する直接的効果が乏しいという当初の仮説に反する事項が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず様々な病態下においてノルアドレナリン神経系がアセトアミノフェンの鎮痛機序に関与している可能性を探るため、糖尿病性神経障害性疼痛モデルラット・内臓痛モデルラットを作成し、in vivoマイクロダイアライシス法による青斑核ノルアドレナリンの測定を行い経時的変化を観察する方針としている。また、アセトアミノフェンとトラマドールの併用により相乗的な鎮痛効果が発生することが知られているが、科学的裏付けが現時点で存在せず、脳内モノアミン動態の変化がこの相乗効果に影響を与えている可能性が十分に考えられること、および現在の実験系によりその証明が可能であると考えられることからアセトアミノフェンとトラマドールを同時投与した際の下行性疼痛抑制系に関わる脳内モノアミン動態の変化を研究する方針としている。 また、アセトアミノフェンのセロトニン系下行性疼痛抑制系への関与を直接的に示す方法として、縫線核でのin vivoマイクロダイアライシス法を今後炎症性慢性疼痛モデル、糖尿病性神経障害性疼痛モデル・内臓痛モデルラットで行いセロトニンの経時的変化を観察するとともに、セロトニン受容体拮抗薬の投与を行い薬効の変化を確認する方針である。
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Causes of Carryover |
昨年度と本年度の助成金を使用することにより本年度に高額の高速液体クロマトグラフィー用の自動打ち込み装置の購入を計画していたため、同実験室の使用済みラットやストックされた実験資材を使用することにより消耗品の不要不急の購入支出を控えていた。しかし、高速液体クロマトグラフィー用自動打ち込み装置に関して、購入の手続きを進めていたものの、当実験室倉庫に保管されていた旧型の自動打ち込み装置をメンテナンスし流用することに成功したため、購入を中止するに至った。それにより必要な消耗品の購入を行っても当初予定していたより少ない使用額で本年度を終えることになった。次年度に関しては現在得られている仮説の検証のためラットなどの消耗品の消費増加が見込まれること、また流用した旧型機械を含めた実験用器材のメンテナンスが必要なことから、次年度使用額と翌年度分としての請求分の全額を使用する予定である。
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