2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K16749
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
藤本 陽平 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (90779430)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アセトアミノフェン / ノルアドレナリン / 鎮痛作用 / 下行性疼痛抑制系 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラット足底に対し、炎症惹起物質である2%カラジーナンの皮下注を行う炎症性疼痛モデルを作成しアセトアミノフェンの鎮痛作用機序に関してノルアドレナリン系下行性疼痛抑制系の関与を継続して調査している。当該年度には、急性炎症性疼痛モデルとしてカラジーナン皮下注後4時間モデルと、亜急性炎症性疼痛モデルとしてカラジーナン皮下注後24時間モデル、そして慢性炎症性疼痛モデルとしてカラジーナン皮下注後3-4日経過したモデルを作成し、それぞれのモデルについてノルアドレナリン系下行性疼痛抑制系へのアセトアミノフェンの作用をin vivo(生体内)で調べた。具体的にはノルアドレナリン系下行性疼痛抑制系の中枢である青斑核と、その末梢への経路として脊髄後角において、アセトアミノフェン投与に伴うそれぞれのノルアドレナリン作動性神経の働きをin vivoマイクロダイアライシスを用いて測定し、プラセボ群と比較した。それと同時に、疼痛閾値についてもそれぞれのモデルについて測定を行った。その結果、急性期・亜急性期モデルにおいて、アセトアミノフェン投与に伴うノルアドレナリン作動性神経の有意な興奮を観察することができた。一方で、慢性疼痛モデルにおいてはアセトアミノフェン投与に伴うノルアドレナリン作動性神経の興奮を観察することはできなかった。それぞれのモデルにおいて、アセトアミノフェン投与に伴い疼痛閾値は上昇を認めた。これらの実験の結果から、急性期・亜急性期におけるノルアドレナリン作動性神経の興奮に関してはアセトアミノフェンの作用である可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記に記載した、生体内におけるノルアドレナリン作動性神経の興奮についてマイクロダイアライシスによりノルアドレナリンを測定する行程が技術的困難を伴った。具体的には、マイクロダイアライシスの標的としている青斑核が小さいこと、また頭蓋骨からの座標をもとに青斑核へのプローブ留置を行うが生体であり個体差を認めること、留置の作業自体も技術的な難易度が高いことなどの理由から実験の成功率を高めることが困難であり、当初想定していたより時間を取られた。現在得られている結果は当初予期していた範囲に収まっていると考えるが、論文としてその結果を発表するためにそれをさらに補強する実験系を追加して行う方針とした。とくに、急性期・亜急性期炎症性疼痛モデルと慢性期炎症性疼痛モデルにおいて生体内での反応に差が出ていることに関して、これまでの実験系ではその差異が本当に生じているのか確信をえられないことから、急性期・亜急性期・慢性期のそれぞれの炎症性疼痛モデルにおいて青斑核・脊髄の免疫染色を行いノルアドレナリン作動性神経が実際に駆動しているかを直接的に調査する必要があると判断し、その実験系での実験を追加することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られている結果は当初予期していた範囲に収まっていると考えるが、論文としてその結果を発表するためにそれをさらに補強する実験系を追加して行う方針とした。とくに、急性期・亜急性期炎症性疼痛モデルと慢性期炎症性疼痛モデルにおいて生体内での反応に差が出ていることに関して、これまでの実験系ではその差異が本当に生じているのか確信をえられないため、その差異を確実に評価する目的で、急性期・亜急性期・慢性期のそれぞれの炎症性疼痛モデルにおいて青斑核・脊髄の免疫染色を行いノルアドレナリン作動性神経が実際に駆動しているかを直接的に調査する必要があると判断し、その実験系での実験を追加する方針とした。もしこの実験系で差が認められれば、急性期疼痛が慢性期に至る過程を経時的に観察するためにさらなる免疫染色での実験の追加が必要となる。一方で差が認められなかった場合、再度生体内(in vivo)マイクロダイアライシスでの慢性炎症性疼痛モデルでの再検証を考慮する。
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Causes of Carryover |
当初計画した脳・脊髄の同時in vivoマイクロダイアライシスは、実際は低効率であったことから、計画を見直し脳・脊髄を個別に実験を進めざるを得ず、そのために当初想定していたより長期間にわたる実験が必要となっていた。現在、急性期及び亜急性期の疼痛モデルにおいて脳・脊髄ともに当初期待された反応を確認し、その説を補強するための追加実験を行いデータを収集している。その最中で測定装置に故障が生じ、計画に遅延が生じたため、次年度使用額が生じた。現在、装置は修復され実験は再開することができている。現時点で、ラットを用いた当初の研究であるin vivoマイクロダイアライシスのデータ収集を行っており、今後は各種モデルラットの青斑核ならびに脊髄後角に対して免疫染色を行い組織学的な評価を行う計画としている。
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