2019 Fiscal Year Research-status Report
慢性痛の発症及び治療における、セロトニントランスポーターの関与についての検討
Project/Area Number |
17K16750
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山崎 広之 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (70759000)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | セロトニントランスポーター / 開胸術後疼痛症候群 / 慢性痛 / 硬膜外麻酔 |
Outline of Annual Research Achievements |
セロトニン(5-HT)は疼痛反応に関与するとされるが、セロトニントランスポーター(5-HTT)遺伝子のプロモーター領域(5-HTTLPR)には多型性があり、長いアレル(L型)と短いアレル(S型)がある。S型を有する場合、5-HTT発現は弱く5-HTのシナプス伝達の頻度が少なくなる。本研究では5-HTTLPR遺伝子多型と開胸術後疼痛症候群との関連性を多施設前向き観察研究により検討した。対象は開胸または胸腔鏡下で肺癌手術を受ける178症例 (当施設126例、関連施設52例)とした。治療中の精神疾患、認知機能障害の症例を除外した。手術前に各患者のDNAを口腔内から採取した。麻酔方法は全身麻酔と硬膜外麻酔、もしくは全身麻酔と創部浸潤麻酔及び自己調節鎮痛によるフェンタニル持続静脈内投与とした。術後1日目、3か月目、6か月目、12か月目の痛みスコア(NRS)、痛みを有する場合の治療介入を聴取した。主要評価項目を各時点の術後痛NRSとし、説明変数に経過時間、遺伝子型、それら2変数の乗算項を含めた混合効果モデルによる解析を行った。5-HTTPLPRについてはSS型かnot SS(SL、LL)型の2変数として扱った。アンケートに回答した162症例(SS型109例、not SS型53例)を解析対象とした。経過時間と遺伝子型の交互作用解析では、NRSの改善についてSS型とnot SS型に有意差は認められなかった (p=0.842)。一方サブグループ解析では、硬膜外麻酔の有無でSS型とnot SS型のNRS推移の傾向が異なり(p=0.05)、SS型はNRSの改善が得られにくい傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
観察研究のデータ収集はすでに終了しており、大まかな解析も完了している。学会発表、論文作成が予定よりもやや遅れているが、2020年度中には完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の前向き観察研究により、セロトニントランスポーター遺伝子多型単独では開胸術後疼痛症候群の慢性化に大きな影響を与えないことが示唆された。今後は他の関連遺伝子を含めた検討が必要である。今回のサブ解析で示されたように術中の麻酔方法によってはセロトニントランスポーター遺伝子多型が影響を与える可能性もあり、研究デザインを変更して検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
研究がやや遅れており、論文作成および国際学会発表を完遂していない。論文投稿、国際学会のため使用する予定である。
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