2018 Fiscal Year Research-status Report
吸入麻酔におけるヒスタミン神経系の役割:部位特異性と興奮性の解析
Project/Area Number |
17K16753
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中村 正帆 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (80734318)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒスタミン神経系 / ヒスタミン |
Outline of Annual Research Achievements |
具体的内容(1)部位特異的H1受容体ノックアウトマウス(cH1KO)における麻酔作用:脳部位特異的にH1受容体が欠損したマウスが吸入全身麻酔薬に対してどのような感受性を示すか検討した。H1受容体が発現し、かつ睡眠覚醒系において重要な役割を果たしている大脳皮質と青斑核(ノルエピネフリン神経)、縫線核(セロトニン神経)、腹側被蓋野(ドパミン神経)においてcH1KOを作製したが、野生型と比較して吸入全身麻酔作用は統計学的に有意な差が無かった。(2)細胞特異的H1受容体ノックアウトマウスにおける行動薬理学実験:ニューロン特異的H1KOとアストロサイト特異的H1KO における行動薬理学実験を実施した。自発運動量が低下しており、睡眠覚醒サイクルにおいても異常を認めた。それぞれの細胞特異的H1KOにおける吸入全身麻酔薬に対する感受性の予備実験を実施した。(3)電気生理学的実験:予備実験としてヒスタミンニューロンが局在している結節乳乳頭核に極細脳波電極を挿入し、吸入麻酔下の電気生理学的変化の測定を試みたが、ノイズが多く有意なシグナルを得られなかった。 意義:本邦では手術麻酔患者の著しい高齢化を認め、術後認知機能障害は主要な術後合併症の一つとして喫緊の対策が求められている。ヒスタミン神経系は認知記憶機能の制御に深く関わっている。これまでの研究からH1 受容体が麻酔感受性や麻酔からの覚醒に重大な役割を担っている事が示唆されるが、吸入麻酔におけるH1 受容体の部位特異的役割が明らかになれば、ヒスタミン神経系の認知記憶機能制御おける吸入麻酔薬の影響を特異的に解析できるため、術後認知機能障害の病態解明・治療開発の研究基盤になる可能性があると考られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
部位特異的H1受容体欠損マウス作製において、極めて小さい領域の神経核特異的にウイルスベクターを安定的に注入する技術が確立されていないため。また最終年度に予定している電気生理学的実験系の構築が予定より遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)細胞特異的H1受容体ノックアウトマウスにおける吸入麻酔薬の作用の検討:ニューロン特異的H1KOとアストロサイト特異的H1KO を用いて、吸入麻酔薬(イソフルラン・セボフルラン・デスフルラン)に対する感受性をLORRや導入時間などの行動実験で評価する。行動実験に当たってはマウスをブラインド化し、かつ行動記録装置(SMART system)で客観的に定量して評価する。 (2)細胞特異的H1受容体ノックアウトマウスの吸入麻酔薬への反応性評価(in vivo脳波解析):表面脳波解析を行い、吸入麻酔により神経活動にどのような変化が生じたか、定量的に検討する。 (3)電気生理学的実験:細胞特異的H1KOマウスの急性脳切片を作製し、吸入麻酔薬投与下におけるニューロン興奮性の変化を電気生理学的に検討する。
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