2017 Fiscal Year Research-status Report
Integrated molecular analysis the utility of oxytocin for comprehensive palliative care.
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17K16759
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
河田 美穂 星薬科大学, 薬学部, 助教 (90761601)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オキシトシン / 緩和医療 / ドパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
がん性疼痛に対する治療においては、様々な痛みをトータルペイン(全人的苦痛) として捉える必要があるとされている。このがん性疼痛はがん悪液質状態を進行させ、がん患者の著しい生活の質(QOL) 低下と生存期間の短縮をもたらす。そのため、トータルペインを包括的に治療し、患者の QOL を高める新しいがん性疼痛治療薬の開発が求められている。近年、視床下部で産生されるオキシトシンが抗うつ作用、さらにはストレス応答制御のみならず、鎮痛作用やドパミン神経の活動制御に関与することが明らかとなってきたことから、オキシトシン関連薬物が新しいがん性疼痛治療薬になり得ると期待されてきている。そこで、緩和医療におけるオキシトシンの有用性を検討するために、オキシトシンによるドパミン神経活動制御機構の解析をマウスを用いて行った。腹側被蓋野を含む脳スライスにオキシトシンを処置し、電気生理学的手法により腹側被蓋野ドパミン神経細胞の活動電位変化を検討した結果、オキシトシン処置によって腹側被蓋野ドパミン神経細胞の活動亢進が認められた。また、側坐核内ドパミン遊離量変化をin vivo マイクロダイアリシス法にて検討した結果、オキシトシン経鼻投与によりドパミン遊離量が有意に増加した。ドパミンは意欲向上、オピオイド鎮痛増強、免疫力上昇等に関与することから、緩和医療において、オキシトシン処置によるドパミン神経細胞の活性調節を伴う治療法は、がん悪液質状態の改善ならびにがん患者の生存期間延長に寄与しうると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画であった、オキシトシンによるドパミン神経活動制御の解析を行い、電気生理学的手法、マイクロダイアリシス法を用いた検討により、オキシトシンがドパミン神経を直接的に活性化し、ドパミン遊離を上昇させることを明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、cFos-TRAP マウスを用いて、オキシトシン投与によって活性化するオキシトシン“オンセル”の同定と解析を行う。これらのオキシトシン“オンセル”中にドパミン神経が含まれるか否かを検討すると共に、オキシトシン神経のネットワークの詳細を明らかにしていく。また、オキシトシン-cre マウスにがん細胞を移植し、オキシトシン神経を特異的に活性化させた際の悪液質状態、免疫応答、運動機能、不安様行動の変化について検討を行う。上記解析から得られた結果を元に、緩和医療におけるオキシトシンの有用性を探索する。
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