2018 Fiscal Year Research-status Report
ES細胞由来知覚神経前駆細胞を用いた新規の慢性疼痛モデルの作製とその病態の解明
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17K16760
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
川治 崇泰 藤田医科大学, 医学部, 助教 (80771245)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経分化 / neurogenin |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ES細胞から神経細胞へと分化誘導をした細胞群から知覚神経細胞になりうる細胞のみを選び出すことにより、知覚神経細胞を効率よく培養し、疼痛の起こる仕組みを研究するための土台を作り上げることを目指す。 昨年度までは、Neurogenin1遺伝子の3'側にP2A配列とeGFPを組み込んだES細胞の作成を行った。このES細胞を使用して神経細胞への分化誘導を行ったところ、eGFPの蛍光は確認されなかった。レチノイン酸には神経細胞への分化亢進作用があることが知られている。そのためレチノイン酸を作用させることをおこなったが、eGFPの蛍光は確認されなかった。定量PCRを行ったところ、eGFPを組み込んだES細胞ではNeurogenin1の発現亢進が確認されなかった。これはES細胞内で何らかの理由でNeurogenin1の発現機構に影響が出ている可能性が考えられる。したがってNeurogenin1と同様に知覚神経細胞分化に必要であり、且つNeurogenin1よりも発現上昇率の高いNeurogenin2の3'側にP2AとeGFPを導入させたES細胞の作成にあたることとした。 Neurogenin遺伝子発現を可視化するためのES細胞の作成と並び、知覚神経細胞の分化誘導系についての検討を行った。体性知覚神経細胞は主に体幹で生じるため、分化誘導系に後方化作用のあるレチノイン酸を作用させたところ、定量PCRにより後方化を示すHox遺伝子の発現上昇とOtxの発現低下が確認された。さらに幾つかの細胞増殖因子を加えると、知覚神経細胞のマーカーであるPou4f1の発現が観察されたため、知覚神経細胞が誘導されていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Neurogenin1遺伝子の3'側にeGFPを組み込んだES細胞は作成されたが、eGFPの蛍光は確認されなかったため、ゲノムからのpgk-neoカセットの除去やレチノイン酸を加えるなど培養条件の検討を行ったため、やや遅れていると判断する。また一方で、知覚神経細胞の分化誘導培養系については、レチノイン酸や幾つかの細胞増殖因子を加えることで、分化マーカーの発現が確認された。そのため、知覚神経分化誘導系についての検討は進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
Neurogenin1の3'側にP2AとeGFPを挿入したES細胞ではeGFPの蛍光が確認されなかったため、P2A以外にIRES配列を用いたeGFPの導入やNeurogenin1のコーディング領域との置換による挿入を検討する。Neurogenin1と並んで知覚神経細胞の分化決定に関わるNeurogenin2は、その発現上昇率がより高いので、Neurogenin2の3'側にeGFPを挿入したES細胞の作成を行う。知覚神経細胞分化誘導系では、加える細胞増殖因子や化学物質の検討を行い、誘導条件の改良を行う。
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Causes of Carryover |
作成したeGFP組み込みES細胞からのeGFPの蛍光を確認することに時間を要した。知覚神経細胞の分化誘導条件検討など、一部の実験に次年度に継続する必要が生じた。 Neurogenin2へのeGFP組み込み実験に必要な酵素や試薬、細胞培養液や器具が必要となる。知覚神経細胞の分化誘導系の実験では細胞増殖因子や化学物質が必要となる。
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