2018 Fiscal Year Research-status Report
血清N-結合型糖鎖の網羅的質量解析による腎盂・尿管癌の糖鎖バイオマーカーの開発
Project/Area Number |
17K16770
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
今西 賢悟 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (10793648)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 尿路上皮癌 / 腫瘍マーカー / 糖鎖 / N-グリカン |
Outline of Annual Research Achievements |
膀胱癌(UCB, 177例)、上部尿路上皮癌(UTUC, 60例)および前立腺癌(PC, 96例)患者の血清、および岩木町住民検診より採取された健常人(339例)の血清のイムノグロブリン分画を精製し、glycoblotting法と質量分析法を組み合わせたN-glycomicsにより、血清イムノグロブリン由来のN-glycanプロファイルを同定した。判別分析によりUC検出に関連する5種のN-glycanを選択した。選択した5種のN-glycan 濃度と判別分析により得られた判別関数を乗算し、積算したスコアをdiagnostic N-glycan score(dNGScore)とした。dNGScoreによる尿路上皮癌の診断に関するROC解析からUCの診断精度を既存検査と比較し、その有用性を検証した。 N-glycomicsで同定された32種の血清イムノグロブリン由来N-glycanのうち、5種のN-glycan(2分岐型m/z 1606、1769、2074およびbisect型m/z 2118、2423)がUCの検出に関連する糖鎖として選択された。健常検体、UCおよびPC検体のイムノグロブリン分画における5種のN-glycanの血中濃度と合成経路の関係から、特にproinflammatory糖鎖であるasialo bisecting N-glycan(m/z 2118)および(m/z 2118)にシアル酸が付加したmonosialyl bisecting N-glycan (m/z 2423)糖鎖修飾血清イムノグロブリンがUCB患者で蓄積することが明らかとなった。さらにUTUCでは、asialo bisecting N-glycan(m/z 2118)が顕著に蓄積していたことから、UCBとUTUCのイムノグロブリンN-glycanプロファイルが少し異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで腎癌、前立腺癌、膵臓癌、肝細胞癌などにおいて血清N-glycanとの関連性が報告されているが、本研究は尿路上皮癌における血清N-glycanの有効性を、多数症例を用いて示した唯一の報告である。平成29年度の研究成果により非侵襲的な手法で尿路上皮癌の診断法の確立に貢献できる可能性が出てきた。平成29年度に予定していた上部尿路上皮癌の血清N-glycanの網羅的解析により、診断マーカーとして有望な糖鎖を同定できたため、概ね順調に進展していると判断した。これまで腎癌、前立腺癌、膵臓癌、肝細胞癌などにおいて血清N-glycanとの関連性が報告されているが、本研究は尿路上皮癌における血清N-glycanの有効性を、多数症例を用いて示した唯一の報告である。非侵襲的な手法で尿路上皮癌の診断法の確立に貢献できる可能性が出てきた。平成29-30年度に予定していた上部尿路上皮癌の血清N-glycanの網羅的解析により、診断マーカーとして有望な糖鎖を同定できたため、概ね順調に進展していると判断した。現在症例を蓄積し、糖鎖変化のメカニズムについて検討を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
N-glycanスコアは診断には有益であるが、癌の病期や進行度との関連については今後の課題である。また、血清N-glycanの測定は癌によって起こされた結果を見ているにすぎず、なぜこのような現象が起きるのかは不明である。癌に伴う糖鎖変化の原因として、腫瘍から産生される可能性、腫瘍に対する応答として産生される可能性が考えられる。また、血清糖鎖はfree N-glycanとして存在するものと、免疫グロブリン等のタンパク質に付加されたものとが存在する。残念ながら、本研究手法ではそれらを区別できないため、血清N-glycanのcarrier proteinや起源については更なる検討が必要である。そこで、carrier proteinの同定のため、免疫グロブリンや炎症性タンパク質不可糖鎖を検討するためにレクチンアレイなどを用いた検討を予定している。
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