2017 Fiscal Year Research-status Report
腎癌の脂肪酸伸長酵素ELOVL2による脂質の質的変容を介した悪性化機序の解明
Project/Area Number |
17K16774
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神鳥 周也 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50707825)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腎癌 / 脂質 / 脂肪酸伸長酵素 / ELOVL2 |
Outline of Annual Research Achievements |
淡明型腎細胞癌症例46例を対象にqRT-PCRによりELOVLアイソザイム1-7の発現解析を行い、臨床情報との比較によりその臨床的意義を検討した。淡明型腎細胞癌組織におけるELOVL1-7の発現量は、非癌部に比べ癌部でELOVL1、ELOVL2、ELOVL5、ELOVL7の発現が亢進しており、特にELOVL2が著明に亢進していた。ELOVL1-7の発現量と臨床情報との比較では、ELOVL2高発現群で全生存率が有意に低く、TCGAデータベースを用いた解析でも同様の結果であった。一方、他のELOVLアイソザイムでは高発現群、低発現群の間で全生存率の有意差を認めなかった。また、ELOVL2が脂肪滴形成を促進するという過去の知見をもとに、淡明型腎細胞癌組織における脂肪滴をオイルレッドO染色で評価を行ったが、ELOVL2発現量と脂肪滴の間には正の相関は認めなかった。 6つの腎癌細胞株(ACHN、SN12c、786-O、SKRC52、Caki-1、OSRC2)におけるELOVL2の発現量をqRT-PCRにより検討した。正常近位尿細管細胞株(RPTEC)と比較してACHN、SN12c、786-O、SKRC52は発現が亢進していた。ELOVL2高発現腎癌細胞株(ACHN、SN12C、786-O)を用い、レンチウイルスベクターシステムを使用してELOVL2発現抑制腎癌細胞株を樹立した。MTTアッセイによりin vitroのおける細胞増殖能に与える影響を検討したところ、ELOVL2発現抑制により腎癌細胞株の細胞増殖が有意に抑制された。さらに、ガスクロマトグラフィーによりELOVL2高発現腎癌細胞株(ACHN、SN12C、786-O)における脂肪酸組成の解析を実施したが、極長鎖脂肪酸を検出することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ガスクロマトグラフィーによりELOVL2高発現腎癌細胞株(ACHN、SN12C、786-O)における脂肪酸組成の解析を実施したが、他の脂肪酸と比較して極長鎖脂肪酸は相対的に少なく検出できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ELOVL2の発現抑制により腎癌細胞株の増殖がin vitroで抑制されたことから、マウス皮下腫瘍モデルを用いてin vivoにおける腫瘍増殖への影響を検討する。また、RNAシークエンスによる網羅的な遺伝子発現解析を行い、ELOVL2により制御される細胞増殖関連遺伝子を同定する。 ELOVL2の発現抑制による脂肪酸組成の変化を確認するためには、極長鎖脂肪酸の検出が必須であると考えられる。また、脂質にはリン脂質に代表される生理活性シグナル分子として機能を有する。そこで、リピドミクスにより各脂質における極長鎖脂肪酸をはじめとする脂肪酸組成の解析を行うことを検討する。
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Causes of Carryover |
当初購入予定であった試薬、マウスが、品切れで年度内に購入ができなかったため予算を執行できなかったので、新年度に変わり次第、購入手続きを取る予定である。
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Research Products
(3 results)