2017 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザ治療薬のシアリダーゼ阻害効果に着目した腎細胞癌の新規治療法の開発
Project/Area Number |
17K16800
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
泉 惠一朗 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (30790737)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シアリダーゼ / シアリダーゼ阻害剤 / 腎細胞癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの解析から、シアリダーゼは癌細胞を制御する重要な分子であることが明らかとなり、癌の新たな治療標的になり得ると考えられた。そこで、本研究においてインフルエンザ治療薬のシアリダーゼ阻害作用に着目し、腎細胞癌のシアリダーゼを標的とした抗腫瘍効果を明らかにする。 本年度はまず、2種類のシアリダーゼ阻害剤を用い、腎癌細胞株に対する増殖抑制能を解析した。各シアリダーゼ阻害剤の阻害濃度を明らかにするため、種々の腎癌細胞株における毒性試験を行った結果、1シアリダーゼ阻害剤は全く細胞毒性を示さず、高濃度による細胞障害も生じなかった。もう一方のシアリダーゼ阻害剤は、高濃度かつ短期間の培養条件下において細胞毒性を示し、低濃度ではアポトーシス様形態を示す細胞が認められなかった。更に、この現象は血清の有無に影響を受けないことも明らかとなった。 次に、これらの現象が腎癌細胞株特有の現象であるのか明らかにするため、前立腺癌細胞株を用いて同様の細胞毒性試験を行った。その結果、やはりシアリダーゼ阻害剤高濃度かつ短期間の培養条件において細胞毒性を示し、癌細胞を速やかにアポトーシスへ誘導するためには高濃度シアリダーゼ阻害剤下の環境が必要であることを明らかにした。一方、本解析では増殖抑制能を評価することがでないため、現在、低濃度シアリダーゼ阻害剤下における長期培養条件において増殖抑制能とそのシグナル伝達経路の解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シアリダーゼ阻害剤の阻害効果の有無とその細胞障害濃度を明らかにすることが出来た。種々の癌細胞株にける細胞障害は、あらかじめ予想された阻害濃度を大きく上回る濃度においてのみ誘導されたため、マウス皮下移植モデル作成等のin vivoにおける解析へと進むことが出来なかった。一方、当該阻害剤の効果は腎細胞癌のみならず、前立腺癌にも応用出来る可能性がみとめられ、順調に進展しているものと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、低濃度において増殖抑制効果を示す至適濃度を明らかにするとともに、まだ未解析のシアリダーゼ阻害剤においても同様に解析し、当該薬剤の有用性を明らかにしていく。その後は、当初の計画に従い、シアリダーゼ阻害剤に反応するシグナル経路の同定および増殖抑制メカニズムを解明し、シアリダーゼの内因性基質候補を絞り込む予定である。また、腎細胞癌におけるシアリダーゼ量と臨床病理学的所見との関連性を解析し、当該分子の診断補助因子としての有用性を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度検討したシアリダーゼ阻害剤の使用条件は、動物実験に不向きであり、動物実験に使用予定の物品を購入しなかったため。 (使用計画)次年度、使用条件を変更した後、動物実験を行う際の物品購入に充足する。
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