2017 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌細胞浸潤を促進する新規細胞膜結合型タンパク分解制御因子に関する研究
Project/Area Number |
17K16809
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
上田 紗弥 (伊藤紗弥) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (90534511)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 前立腺癌 / 癌細胞浸潤 / タンパク分解制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
前立腺癌の浸潤・転移メカニズムは明らかにされておらず、効果的治療を行う上で浸潤・転移制御を担う鍵因子の同定は必須であると考えられる。本研究では、前立腺癌転移モデルショウジョウバエを用いたスクリーニングにより見出した二つの浸潤促進因子(CNPY2・MEP1A)を介した前立腺癌細胞の浸潤・転移メカニズムの解明を目指す。 当該年度に行った研究により、CNPY2の作用機序の一つとして前立腺癌増悪の鍵因子であるアンドロン受容体(AR)のタンパク量制御を見出した。まず、CNPY2との相互作用が知られているE3ユビキチン化酵素MYLIPがARのポリユビキチン化を担うことを示した。次に、CNPY2はMYLIPとE2ユビキチン酵素UBE2D1の相互作用を阻害することで、MYLIPによるARのポリユビキチン化を抑制する分子メカニズムを明らかにした。CNPY2によるARのポリユビキチン化抑制はユビキチン-プロテアソーム系を介したARのタンパク分解を阻害し、結果的にARタンパクの蓄積を誘導すると考えられる。実際に、CNPY2の機能阻害により引き起こされる前立腺癌細胞の増殖抑制はARの強制発現により抑制解除された。また、前立腺癌患者検体においてもCNPY2とARの発現量に正の相関が認められた。 ARは病期が進み転移性を有する前立腺癌において高発現しており癌の増悪に寄与すると推測されているものの、これまでにその発現量制御メカニズムは殆ど明らかにされていなかった。本研究では、CNPY2がARタンパク分解抑制を介して前立腺癌の増悪促進の一端を担う分子メカニズムを示すことができた。CNPY2は前立腺癌の治療標的分子となりうる可能性が高く、さらなる分子機能評価の遂行が悪性度の高い転移性前立腺癌に対する効果的治療法の開発に繋がると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、CNPY2とMEP1Aの作用機序解明を通じて前立腺癌の細胞浸潤・転移制御メカニズムを解明することである。当該年度までに実施した研究の結果、前立腺癌細胞におけるCNPY2の作用機序の一端としてARのタンパク分解制御メカニズムを明らかにするに至った。また、当初計画していたCNPY2をベイトとしたアフィニティー精製により、前立腺癌細胞における数種のCNPY2相互作用因子の同定に成功している。一方、MEP1Aはアンドロゲン刺激によりプロセッシングを受け活性化することを見出しており、MEP1A活性化制御メカニズムに関して解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に引き続き、培養細胞とin vitro解析系を用いたCNPY2・MEP1Aの分子機能解析を遂行する。また研究計画に従い、マウス前立腺癌転移モデルを用いてCNPY2・MEP1A・相互作用因子の転移制御能を個体レベルで評価する。さらに、ヒト前立腺癌患者検体におけるCNPY2・MEP1A・相互作用因子の発現量解析を行い、癌の悪性度との相関を検証する。
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Causes of Carryover |
[次年度使用額が生じた理由]研究の進行状況に応じて必要となる試薬(カスタムオリゴなど)に係る使用額が、当初の計画に比べ少額で済んだため。 [翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画]申請時の使用計画に従い、実験用試薬・消耗品及び旅費・論文投稿料・学会参加費等に使用する予定である。
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[Journal Article] CNPY2 promoted the proliferation of renal cell carcinoma cells and increased the expression of TP53.2017
Author(s)
Taniguchi H, Ito S, Ueda T, Morioka Y, Kayukawa N, Ueno A, Nakagawa H, Fujihara A, Ushijima S, Kanazawa M, Hongo F, Ukimura O.
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun.
Volume: 485
Pages: 267-271
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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