2017 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸癌におけるPIK3CA遺伝子変異をターゲットとした新規分子標的治療の探索
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17K16828
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
秋山 梓 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80647272)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子宮頸癌 / シスプラチン併用同時化学放射線療法 / PI3-kinase/Aktシグナル伝達経路 / PIK3CA遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
局所進行子宮頸癌の標準治療はシスプラチン併用同時化学放射線療法であるが、その5年生存率は30~50%と未だ不良であり、新規治療戦略の開発が強く望まれる。PI3-kinase/Aktシグナル伝達経路は多くの癌において発癌機序に関与する重要な経路であり、PI3-kinaseを構成する触媒サブユニットであるp110α蛋白をコードするPIK3CA遺伝子は、子宮頸癌の13~36%に変異が報告されている。また、PI3-kinase/Aktシグナル伝達経路はシスプラチン耐性および放射線耐性の双方に関与することが知られているが、PIK3CA遺伝子変異とCCRTによる反応性・予後との関連性の報告はこれまで非常に数少ない。そこで、局所進行子宮頸癌におけるPIK3CA遺伝子変異の予後への関連性を明らかにするために、シスプラチン毎週投与併用同時化学放射線療法を施行したIII~IV期子宮頸癌50症例において、PIK3CA遺伝子変異を解析した。PIK3CA遺伝子変異・増幅と臨床病理学的因子との相関はFisher’s exact test、予後との相関はKaplan-Meier法およびlog-rank testにより解析を行う。各因子の生存期間との相関性をCox比例ハザードモデルにより検討した。治療前の生検検体のパラフィンブロックからDNAを抽出し、腫瘍組織DNAにおいてPIK3CA遺伝子変異および増幅をdirect sequencing法およびreal-time PCR法により検索した。また免疫染色によりAktなど下流蛋白のリン酸化を調べ、PI3K/Aktシグナル経路の活性化や子宮頸癌細胞株を用い分子標的治療薬によるPI3K/Akt経路阻害を確認する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト子宮頸癌細胞6株においてPIK3CA遺伝子変異をエクソン9および20においてdirect sequencingにて解析したところ、2株において変異を認めた。次に患者50名の治療前の生検検体のパラフィンブロックからDNAを抽出し、同様にPIK3CA遺伝子変異を解析したところ、7名(14%)に変異を認めた。認めた変異は全て、p110α蛋白のヘリカルドメインおよびキナーゼドメイン内に位置していた。遺伝子変異の有無により臨床病理学的因子に有意な相違は認められなかった。次に変異の有無により全生存期間を比較したところ、変異症例は正常例に比べ有意に予後不良であった(p=0.016)。さらに予後不良因子の単変量解析を行ったところ、進行期、骨盤リンパ節転移、PIK3CA遺伝子変異の3因子が有意な予後不良因子であった(それぞれp=0.033, 0.047, 0.024)。これら3因子においてさらに多変量解析を行ったところ、進行期およびPIK3CA遺伝子変異が有意な独立した予後不良因子であった(それぞれp=0.034, 0.0085)。シスプラチン併用同時化学放射線療法で治療された局所進行子宮頸癌では、PIK3CA遺伝子変異例は正常例に比して有意に予後不良であることから、分子標的薬によりPI3-kinaseをブロックすることにより、CCRTによる予後を改善できる可能性が示唆された。このことがもし証明されれば、現在いまだ不良である局所進行子宮頸癌予後の改善効果が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
PIK3CA遺伝子変異症例はPIK3CA遺伝子変異のホットスポットである、エクソン9、および20をPCRにて増幅し、その産物を電気泳動してゲルから切り出し、DNAを抽出・精製を行う。それを用いてダイレクト・シークエンス法によりDNA配列を解析する。各症例のDNA配列と正常なPIK3CA遺伝子のDNA配列と比較し、変異の有無と種類、蛋白質上の変異の位置等を決定する。またPIK3CA遺伝子増幅をリアルタイムPCR法により、GCK遺伝子を内部コントロールとして正常な子宮頸部組織との比較によりコピー数を解析する。遺伝子変異または遺伝子増幅を含めて遺伝子異常の有無として評価し、治療反応性・予後との相関性を統計学的に解析する。遺伝子変異・増幅と治療反応性・予後との相関性の解析により得られた結果を、腫瘍組織検体から白雪標本を作製し、免疫染色によりAktなどPI3K/Akt経路下流蛋白のリン酸化を調べ、シグナル経路の活性化について調べる。 子宮頸癌細胞株Caskiを用い、分子標的薬によるPI3K/Akt経路の阻害による効果を調べる。標的分子が実際に阻害されているかをウェスタンブロットおよびRT-PCRにより、蛋白・RNAレベルで確認する。また各細胞機能の評価を行う。アポトーシスの検出のためTUNEL染色、およびAnnexin Vアッセイを行う。股細胞周期の評価のため、フローサイトメトリーを行い、アポトーシスおよびG1アレスとの有無を評価する。また細胞浸潤能を調べるため、ボイデンチャンバーを用いた浸潤アッセイを行う。
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Causes of Carryover |
研究の進行状況から、実験で使う物品の購入が予定より少なくなってしまったため次年度使用額が生じてしまった。 PIK3CA遺伝子変異についてダイレクト・シークエンス法、遺伝子増幅についてリアルタイムPCR法を行う際に使用します。
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