2017 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲンの制御性T細胞を介した妊娠維持機構と糖代謝調節は存在するのか
Project/Area Number |
17K16838
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
鮫島 梓 富山大学, 附属病院, 助教 (80778465)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エストロゲン / 制御性T細胞 / 糖代謝 / 更年期 / 妊娠 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物モデルとしてCD4+T細胞のみにエストロゲン受容体(ER)αを欠損するマウスを作製し、安定した繁殖が得られた。このマウスをワイルドタイプマウスと交配させ、妊娠中の糖代謝異常について解析を行った。通常の食事の場合はノックアウトマウスの糖代謝異常は認められなかった。また、脂肪組織における炎症の評価を行ったが、脂肪組織において、制御性T細胞の減少は認めらず、炎症の増悪も認められなかった。妊娠前から高脂肪食負荷をかけた妊娠糖尿病モデルマウルを用いて、糖代謝異常を評価する予定である。 同じノックアウトマウスを用いた流産の検討を行った。有意な差はないが、ノックアウトマウスでは子宮において制御性T細胞が減少している傾向が見られた。アロ交配、同系交配マウスの流産率に差はなかった。 閉経肥満モデルマウスの耐糖能異常が制御性T細胞の輸注により改善するかについて検討した。閉経により脂肪組織でM1マクロファーが増加し、炎症所見の増悪が認められ、糖代謝との関連性が示された。さらに制御性T細胞の関連を明らかにするため、閉経肥満モデルマウスに制御性T細胞を輸注した。輸注した制御性T細胞の80%が内臓脂肪に動員されていることが確認できたものの、耐糖能に有意な変化は得られなかった。一方、制御性T細胞を増加させるビタミンD3の投与は糖代謝の改善傾向が見られた。現在、この機序に関して脂肪組織等の炎症など検討中である。 CD4+T細胞特異的ERα欠損マウスの卵巣摘出を行い、閉経状態としたマウスで糖代謝、内臓脂肪組織の炎症を検討したが、有意な差は得られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CD4陽性T細胞特異的ERα欠損マウスを交配し、妊娠することに成功し、現在、安定した繁殖が得られている。またこのマウスの通常食負荷時の妊娠における免疫寛容の解析のため、脾臓、全身表在リンパ節、子宮所属リンパ節および子宮からリンパ球を分離したのリンパ球の変動をフローサイトメトリーにて解析した。ただし、妊娠糖尿病についての解析は通常食負荷での糖代謝の検討に留まっているため、今後、高脂肪食負荷をかけ、糖尿病を誘導した妊娠マウスでの検討を追加する必要がある。 閉経肥満モデルマウスにおける脾臓、内臓脂肪細胞等の免疫担当細胞の変動の解析が終了した。CD4陽性T細胞特異的ERα欠損マウスの閉経状態での解析も行った。今後は閉経後すぐ(未病状態)での制御性T細胞やそのほかの免疫担当細胞、炎症所見の検討を行う予定としている。
|
Strategy for Future Research Activity |
D4+T細胞特異的ERα欠損マウスの妊娠における免疫寛容は通常食負荷では有意な差は得られなかったため、今後、高脂肪食負荷をかけ、肥満状態にしたマウスを用いて、妊娠糖尿病との関連性を評価する予定である。 閉経肥満モデルマウスの解析は閉経4週間より糖代謝異常が出現することがわかり、これ以前での炎症、免疫細胞の変化の解析を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
学会参加のための旅費、人件費が予定より少なくなったために差額が生じた。次年度は学会参加(国際学会を含め)が増えることが予想され、その費用として使用したい。また、妊娠糖尿病の実験ではさらに高脂肪食負荷をかけて解析をすることになったため、マウスの購入費、フローサイトメトリーの試薬費用として使用したい。
|