2017 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌におけるmicroRNA生合成過程が抗癌剤耐性化に及ぼす影響の検討
Project/Area Number |
17K16848
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久松 武志 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (80791376)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | miRNA / 抗癌剤耐性化 / パクリタキセル / 卵巣癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣癌に対しては手術療法及び化学療法を中心とした集学的治療が行われているが、治療後の再発率や長期予後は現在に至るまで著明な改善を認めていない。その大きな原因の一つに卵巣癌における抗癌剤耐性化の性質が挙げられる。Key drug となるパクリタキセルとプラチナ製剤の中心とした化学療法に対して卵巣癌は初回治療では約70%の奏効率を示すが残念ながら半数以上の症例で早晩再発を来し、再発した卵巣癌においては化学療法に対する耐性化が起こる。この現状を打破するために抗癌剤耐性化のメカニズムの解明や新たな治療薬の開発が求められている。本研究はその方策を small RNA の一つである micro RNA (miRNA) に求めた。 卵巣癌細胞株 SKOV3ip1 と HeyA8 をパクリタキセルの低用量より投与しながら、持続培養を行い、パクリタキセル耐性株を作成した。その耐性株より RNA を抽出し、miRNA microarray 法を用いて、耐性化により発現が変動する miRNA の網羅的解析を行い、両耐性株において発現が有意に低下する miR-522 を見出した。miRNA RT-PCR 法にて発現の有意な低下を確認した。。あらに Public Database である PROGmiRV2 を用いて、卵巣癌における miR-522 の発現の予後に与える影響を検討したところ、miR-522 の発現低下は無病生存期間、全生存期間いずれにおいても予後不良因子であり、その発現低下は抗癌剤の耐性化と関連している可能性が示唆された。そこで、卵巣癌耐性株に miR-522 を医鈍し導入したところ、パクリタキセルに対する抵抗性は解除された。逆に親株にその阻害剤を導入したところ、親株は抗癌剤抵抗性を獲得した、以上、2017年度は卵巣癌の抗癌剤耐性化に関わる miR-522 を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間は要したが、二種類の卵巣癌細胞株 SKOV3ip1 と HeyA8 のパクリタキセル耐性株の作成に成功した。さらに網羅的解析を通じて、パクリタキセル耐性に関わる候補 miRNA をいくつか同定することができた。さらに臨床検体における miRNA の発現の意義についても検討し、有意な差を見出すことができた。以上、実験はおおむね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2018 年度はさらに miR-522 が標的とする分子の同定を行う。miR-522 の耐性株への遺伝子導入により、細胞周期にどのような影響を与えるか Flow Cytometry 法で検討する。miR-522 が細胞周期に影響を与えているならば、その関連分子の発現をWestern Blot法で検証する。さらにこの関連分子と卵巣癌予後との関連を Public Database および当院が保有する卵巣癌組織検体の免疫組織染色で検討する。さらに miRNA の発現そのものを制御する PACT に着目し、その発現が予後に与える影響も検討する。以上の検討を通じて、卵巣癌の抗癌剤耐性化獲得に至るメカニズムの一つを解明することを目指す。
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