2017 Fiscal Year Research-status Report
卵巣がんの新規治療標的ーBRCA1修復システムに属するがん抑制遺伝子
Project/Area Number |
17K16876
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Research Institution | Miyagi Prefectural Hospital Organization Miyagi Cancer Center |
Principal Investigator |
野村 美有樹 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (40390893)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | BRCA / 卵巣がん / PP6 |
Outline of Annual Research Achievements |
BRCA1は、卵巣がんや乳がんに関連するがん抑制遺伝子である。BRCA1は、2本鎖切断(DSB)されたDNAの修復に働く。申請者は、独自にPpp6c(PP6の触媒サブユニット)がBRCA1に結合すること、さらに脱リン酸活性を持たない変異型Ppp6cはより強く結合することを見いだした。このデータは、PP6がBRCA1の脱リン酸化を制御することや、PP6の失活がBRCA1の過剰リン酸化を起こすことを示唆した。申請者は、PP6活性の低下がBRAC1の異常を起こし、それによるDNA修復異常が卵巣がんや乳がんの発生原因となるとの仮説を持った。 申請者らは、PP6が卵巣がんの抑制遺伝子かどうかを確かめるためPpp6c欠失マウスを作製したところ、Ppp6c欠失マウスは胎生致死であることが分かった。そこで、次にPpp6cを組織特異的に欠失できるマウス(Ppp6cflox/flox)を作製した。一般に、がん抑制遺伝子の同定には、信頼性のある皮膚発がん実験の系が使われている。まずこの系を使って検証を開始した。Ppp6c欠失皮膚に紫外線照射をすると、正常皮膚では腫瘍形成しない時期にも関わらず、腫瘍形成が認められた。またそれは皮膚扁平上皮がんであることが分かった。この事は、Ppp6cが皮膚においてはUV誘発発がんの抑制遺伝子であることを示した。またこの腫瘍において2本鎖DNA切断が高頻度に見出され、DNA修復異常が起きていることが示唆された。これらのデータを基にして、我々は、卵巣の腫瘍化について、「PP6機能不全→BRCA1リン酸化異常→DSB蓄積→がん遺伝子・がん抑制遺伝子の変異→腫瘍化」の仮説をもった。我々は、Ppp6cを卵巣特異的に欠損させ、がん抑制遺伝子として働くか否かの検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣がんでは、RASの上流にあたるEGFR、ERB2、FMSの過剰発現が報告されている。また、下流のPI3K、AKT2の増幅が報告されている。このことから、卵巣に変異型RASを発現させ、それと同時にPpp6cを欠失させることによる腫瘍形成の影響を調べることにした。そのため、我々が作製したPpp6cflox/floxマウスをKrasLSL-G12D/+マウス(ジャクソン研から購入)と掛け合わせてPpp6cflox/flox; KrasLSL-G12D/+マウスを作製した。このマウスに、開腹手術により卵管漏斗を介してAde-CREを感染させることによって、卵巣に2重変異(Ppp6c欠損と活性化型KRAS変異)を導入させた。興味のあることに、活性化型KRASの発現のみでは異常は認められないが、2重変異(Ppp6c欠損と活性化型KRAS変異)導入で早期にマウスは死亡した。一部死亡例の直前に解剖したところ、広範な腹膜播種が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記プレリミナリーな結果に基づき、充分な匹数を用いて本実験を行う。①活性化型KRASを発現するマウス (KrasLSL-G12D/+)を20匹、②活性化型KRAS発現とPpp6c欠損をもつマウス (Ppp6cflox/flox; KrasLSL-G12D/+)を20匹、③Ppp6c欠損をもつマウス(Ppp6cflox/flox)を20匹、④野生型を20匹用いる。それぞれ、前述のように卵巣表層上皮細胞に2重変異またはKRAS変異を導入させる。それぞれの変異で発生する卵巣腫瘍について、その数、大きさ、病理学的所見について比較する。
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Causes of Carryover |
消耗品費が当初の想定よりもわずかに少なく済んだため。 次年度の消耗品費に上積みし、より迅速な計画進捗をねらう。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Loss of protein phosphatase 6 in mouse keratinocytes enhances K-rasG12D-driven tumor promotion.2018
Author(s)
Kurosawa K, Inoue Y, Kakugawa Y, Yamashita Y, Kanazawa K, Kishimoto K, Nomura M, Momoi Y, Sato I, Chiba N, Suzuki M, Ogoh H, Yamada H, Miura K, Watanabe T, Tanuma N, Tachi M, and Shima H
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Journal Title
Cancer Science
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
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[Journal Article] PKM1 Confers Metabolic Advantages and Promotes Cell-Autonomous Tumor Cell Growth2018
Author(s)
K, Sugiura Y, Takizaki H, Yamashita Y, Katakura R, Sato I, Kawai M, Okada Y, Watanabe H, Kondoh G, Matsumoto S, Kishimoto A, Obata M, Matsumoto M, Fukuhara T, Motohashi H, Suematsu M, Komatsu M, Nakayama KI, Watanabe T, Soga T, Shima H, Maemondo M, Tanuma N.
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Journal Title
Cancer Cell
Volume: 33
Pages: 355~367.e7
DOI
Peer Reviewed
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