2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K16889
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
寺田 小百合 山形大学, 医学部, 医員 (40795697)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ASSR / Chirp音 |
Outline of Annual Research Achievements |
Chirp音による聴性定常反応(ASSR)は従来のAM2音によるシステムに比較して、短い検査時間で精度の高い聴力評価が可能と期待されているが、新しい検査システムであるため詳細な分析を行った報告は少ない。本研究では、Chirp音によるASSRの検査精度と検査時間、そして小児難聴児に対する残存聴力活用型人工内耳(EAS)の有効性について検討することが目的である。 令和元年度は、小児例において、Chirp音刺激によるASSRと従来のAM2音刺激によるASSRについて、検査精度と検査時間をそれぞれ比較検討した。その結果、Chirp音によるASSRの閾値は純音聴力検査閾値を概ね反映しており、さらに従来のAM2音によるASSRと比較して検査時間の短縮が可能であった。 令和2年度は、小児の睡眠下において、刺激頻度の違いによるChirp- ASSRの反応閾値を検討した。従来のASSRでは、睡眠下の場合、刺激頻度が40Hzと90Hzでは、90Hzの方がより検査精度が高いと言われている。Chirp音刺激によるASSRについて、従来と同様か否かを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来のAM音刺激によるASSRでは、覚醒下と睡眠下ではそれぞれ適する刺激頻度が異なると言われてきた。具体的には、覚醒下では刺激頻度40Hzが適しているのに対し、睡眠下では刺激頻度90Hzが適していると言われている。 今年度は、従来のASSRと同様に、Chirp音刺激によるASSRについても、刺激頻度の違いにより検査精度に違いが認められるかどうかを検討した。対象は、睡眠下にて同日に刺激頻度90Hzと40Hzの両者を測定しえた小児31例とした。睡眠深度による違いをなくすため、16例については90Hz刺激による検査後に40Hz刺激による検査を行い、残りの15例については40Hz刺激による検査後に90Hz刺激による検査を行った。ASSR反応閾値と純音聴力検査閾値の差をDS(Differencial Score)とし、刺激頻度90Hz群と刺激頻度40Hz群に分けて検討した。結果、2000Hzと4000Hzでは刺激頻度90Hzの方が有意にDSが小さい結果となった。以上より睡眠下のChirp- ASSRにおいて、少なくとも2000Hzと4000Hzでは、従来通り刺激頻度90Hzの方が検査精度が高い可能性が示唆された。今後はさらに症例数を増やして検討を加えていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度までの研究によって、Chirp音刺激によるASSRは成人例、小児例ともに従来のASSRと同等の検査精度を持ち、さらに従来よりも検査時間の短縮が可能であると考えられた。さらに刺激頻度などの条件についても従来と同様の条件で同等の検査精度を得られることがわかった。 今後は、本研究の最終目的である、残存聴力活用型人工内耳(EAS)におけるChirp音刺激によるASSRの有効性についての検討を予定している。EASの適応には詳細な聴力評価が必要であるが、小児例において残存聴力を正確に評価することは困難である。令和3年度は、EASの適応となるような小児例について、Chirp音刺激によるASSRを施行し、その有効性について検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度はChirp音刺激によるASSRの刺激頻度による検査精度の違いについて検討したが、当初の予定では、残存聴力活用型人工内耳(EAS)の適応となる症例を収集し、Chirp音刺激によるASSRの有効性を検討する予定であった。しかしコロナウイルスの感染拡大に伴い、症例の収集が予定通りにできなかった。さらに学会の延長やオンライン開催などにより令和2年度に使用予定であった旅費を使用しなかった。令和3年度は残存聴力活用型人工内耳(EAS)の適応となる症例を収集し、Chirp音刺激によるASSRを用いて聴力評価を行い、有効性について検討する予定である。当該助成金は、ASSR検査のための物品費や人件費として使用し、さらに研究成果の発表のための旅費として使用予定である。
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