2018 Fiscal Year Research-status Report
一側性嗅覚検査によるアルツハイマー病早期診断法の確立
Project/Area Number |
17K16897
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐々木 崇暢 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (30793070)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 認知症 / 認知機能低下 / オープンエッセンス / 嗅覚障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者人口が増加の一途をたどる本邦において、アルツハイマー病(AD)を主とした認知症のスクリーニング法の開発は喫緊の課題である。ADやパーキンソン病 などの認知症を呈する神経変性疾患では早期から嗅覚障害がみられることが知られている。本研究の目的は、ADの各病期における嗅覚障害を解析することで、嗅 覚検査がADスクリーニングとして利用できるか検証することである。 現在までにAD症例を対象にT&Tオルファクトメーターによる一側性嗅覚検査およびAD早期画像診断支援ソフトであるVSRADを用いた内側側頭葉萎縮を解析し、その 結果、内側側頭葉萎縮に有意な左右差を認め、嗅覚障害に関しては有意差まではないものの、左右差がみられる傾向が示された。 現在は健常高齢者を対象とし、12種類の嗅素を用いたカード型嗅覚同定能力測定用カードキット(オープンエッセンス)を用いた嗅覚検査を行なっている。300 例ほどの解析から、加齢に伴い嗅覚が低下すること、女性は男性に比べ嗅覚が保たれていること、高齢者では嗅覚の主観的評価と客観的評価に乖離がみられる傾 向が示された。 今後は嗅覚と認知機能の関連を解析し、嗅覚低下と認知機能低下との相関や、主観的評価と客観的評価の乖離と認知機能の関連について検討していく。また、 オープンエッセンスの各嗅素における正答率と認知機能の関連を解析し、12種の嗅素の中で鋭敏に認知機能低下を反映しているものがないか検討する。 最終的には高齢者の嗅覚を長期間フォローすることで、AD発症群、非発症群における嗅覚低下の差異を検討し、非侵襲的かつ簡便な嗅覚検査がADスクリーニング の新たなバイオマーカーとして有用か検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本学で実施している十日町いきいき健康調査とよばれる健常高齢者を対象とした横断的な疫学研究において、12種の嗅素(墨汁、材木、香水、メントール、みかん、カレー、家庭用ガス、ばら、ひのき、蒸れた靴下、練乳、炒めたにんにく)を用いた嗅覚同定検査であるオープンエッセンスによる嗅覚評価と、MMSE-Jによる認知機能との関連を検討した。2018年度の日本鼻科学会総会・学術講演会において、加齢により嗅覚は低下し、高齢者では自覚的な嗅覚と客観的な嗅覚に乖離を認めることを発表した。また、オープンエッセンスの嗅素毎の検討を行ない、墨汁、材木、メントール、練乳の4嗅素は認知機能により有意な差があり、この4嗅素を用いた認知機能低下の有無をROC曲線で描くとAUCは0.673となった。4嗅素の合計値(0から4)のカットオフ値を2に設定した場合、認知機能低下のスクリーニングとして感度69.5%、特異度59.0%という結果になった。
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Strategy for Future Research Activity |
嗅覚検査を施行した群を長期間経過観察し、アルツハイマー病を発症する群の嗅覚の推移を把握する。また、嗅覚のみならず、ApoE4や脳MRI、聴力検査などを総合的に評価し、認知症スクリーニング法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
設備備品として計画していたT&Tオルファクトメーターおよび排気チェンバーを嗅覚同定能力測定用カードキット(オープンエッセンス)にて代用できたため、 初年度の使用金額に差異が生じた。今後もオープンエッセンスを追加購入する予定であり、その物品費として使用していく予定である
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