2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K16912
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大畠 和也 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10778632)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外有毛細胞 / セロトニン |
Outline of Annual Research Achievements |
野生型マウスおよび5-HT3A受容体KOマウスにおいて内耳における形態的変化を評価したところ、両者の間で有意な差は認めなかった。また聴性脳幹反応検査および歪成分耳音響放射を用いて定常状態における聴力を比較したが、こちらについても両者の間で有意な差は認められなかった。次に5-HT3A受容体の詳細な発現部位を同定するために5-HT3A-GFPトランスジェニックマウスの蝸牛組織標本を用いて免疫染色を行った結果、この受容体が有毛細胞の遠心性神経に特異的に発現している可能性が高いことを同定した。さらに神経トレーサーの鼓室内投与を行い詳細に評価したところ、外有毛細胞の遠心性線維に特異的に発現していることを確認できた。以上のことから、5-HT3A受容体が聴覚感度調整等に関与するとされる外有毛細胞の遠心性線維に発現しているもの定常状態ではKOマウスにおいてもその機能に低下が見られないことから何らかの内耳障害下においてのみ機能を呈するのではないかと推察された。セロトニン受容体の内耳に対する働きについてはほとんど報告がなく、その発現部位の同定ができたことは大いに評価できると考えられる。 次年度は先に述べた内耳障害時における評価を行うため、内耳障害モデルとしてシスプラチンおよび音響外傷モデルを採用し形態的および聴覚機能の評価を行う予定にしている。内耳障害時に機能を呈することを確認できれば、この受容体を活性化もしくは抑制させることが内耳障害への治療につながる可能性も期待できると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は5-HT3A受容体の発現部位を同定できたことが最大の成果と言える。定常状態において野生型マウスと5-HT3A受容体KOマウス間で有意な差はなかったが、数あるセロトニン受容体の中で唯一イオンチャネル型である3A受容体の特性を考えると特殊な条件下で機能を呈することが期待される。シスプラチン投与後の評価は次年度に充分施行可能であり全体としては概ね順調な進展と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
内耳障害下における5-HT3A受容体の機能を、シスプラチンや音響外傷モデルを用いて評価したいと考えている。この受容体が中枢から末梢を支配する遠心性線維に発現していることから、脳内での神経活動と受容体の機能を合わせて評価することも行いたい。
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Causes of Carryover |
当初導入予定であった歪成分耳音響放射装置を他施設から借りることができたため、予定よりも経費を抑えることが可能であった。次年度は装置を返却する予定のため同装置の導入予算として使用予定である。
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