2018 Fiscal Year Research-status Report
異嗅症モデルマウスを用いた嗅細胞の投射異常と継時的修復メカニズムに関する研究
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17K16919
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村井 綾 岡山大学, 大学病院, 医員 (00780834)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 嗅覚障害 / 軸索ガイダンス因子 / ワーラー変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当教室ではマウスの嗅細胞の軸索を切断した外傷性嗅覚モデルを用いて嗅覚障害およびその再生についての研究を行っている。本年度は嗅覚障害モデルマウスにおける軸索ガイダンス因子や軸索の変性の防止が嗅覚障害の再生促進や投射異常を改善することになるか、検討を行った。まず、使用する遺伝子組み換えマウスの繁殖および組み換えた遺伝子変異の発現について検証した。Wlds変異(Wallerian degeneration slow)はワーラー変性(神経軸索が変性していく過程)が2週間遅れる遺伝子変異である。この遺伝子をマウスの嗅細胞に組み込んだ遺伝子組み換えマウスを作製し、軸索切断を行った。嗅細胞の軸索切断を行い1週間後、2週間後、6週間後の軸索の変化を経時的に観察した。嗅細胞の軸索切断後にはワーラー変性が起こるとの報告があるが、軸索切断後2週間の時点でも、変異なし群と変異あり群では軸索の変性状況に差がなく、6週間後において、軸索切断後の再生軸索の投射異常が改善することはなかった。また、セマフォリン3Aは胎生期に嗅細胞軸索の投射先を決定する軸索ガイダンス因子の一つであると同時に神経忌避因子でもある。セマフォリン3Aを吸着させたビーズを嗅球前方に設置したが、軸索切断6週間後に再生嗅細胞軸索の伸長が阻害されていため、成人期のマウスにおいてセマフォリン3Aは神経忌避因子としての機能が強く出ていると考えられ、これを用いて再生嗅細胞軸索を所定の位置に誘導することで,投射異常による異嗅覚症が改善する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はセマフォリン投与による嗅覚再生の寄与を検討予定であった。研究員の出産、育児に伴い、研究が一時中断していたが、当学男女共同参画室による研究補助員支援制度を活用し、研究活動を継続可能となった。遺伝子組み換えマウスの系等維持と組み換え遺伝子の発現確認が主となったこと、セマフォリン3Aが成人期のマウスにおいては軸索ガイダンス因子としてではなく、神経忌避因子としての性質を強く持つことが明らかになってきたため遅れているが、本年度の研究によりセマフォリンの作用を阻害した方が嗅覚再生を促進するのではないかという仮説の元、現在新規薬剤投与を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によりWlds変異は嗅覚再生に寄与しないこと、セマフォリン3Aは阻害するほうが、神経の再生に有効であるのではないかと考えられる。嗅覚細胞を特異的に蛍光標識する他の遺伝子組み換えマウスをもちいて、外傷性嗅覚障害モデルマウスを作製し、セマフォリン阻害薬が外傷性嗅覚障害の治療薬となりえるか、行動実験や組織学的検討を介して嗅覚再生の寄与について検討を行う。
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Causes of Carryover |
物品を購入する際に業者間比較を十分に行ったことなどにより、予定額よりも購入額を抑えることが可能であったため、次年度使用額が発生した。使用残額は試薬などの消耗品費購入のために使用する予定である。
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