2017 Fiscal Year Research-status Report
複層的アプローチによるラセン靭帯線維細胞の電気生理学的機能解析
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17K16924
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 崇正 九州大学, 大学病院, その他 (50600912)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蝸牛 / 聴覚 / 電気生理 / ラセン靭帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
内リンパ液高電位(EP)と蝸牛K 循環は聴覚に必須の特性で、蝸牛側壁のイオン輸送に立脚し、その破綻は難聴を惹起する。蝸牛側壁のラセン靭帯では、ギャップ結合による細胞間交通の重要性が広く認知される一方で、細胞そのものの電気生理学的データは皆無である。ラセン靭帯線維細胞(SLF)周囲の強靭なコラーゲンマトリクスのため、パッチクランプ電極でギガオームシールを達成できないのがその大きな要因となっている。細胞外マトリクスがルーズな胎児・新生児期の動物を用いたパッチクランプは試みられているが、この時期は聴覚が未成熟であり、蝸牛ではEPやK循環などの電気生理学的特性が成立していない。聴覚生理機序の解明のためには聴覚が成熟した成獣のデータが不可欠である。 本課題では、従来の技術的な問題を克服して、パッチクランプ法によって成獣蝸牛のSLFの膜電流を測定し、その分子基盤を同定することを目的とする。 初年度は、ラット成獣の蝸牛から単離したSLFを対象に、パッチクランプ法による膜電流測定の実験系確立を目指した。スライスパッチクランプ法に、コラゲナーゼ処理と近赤外微分干渉顕微鏡(IR-DIC)観察を併用することで、これまで不可能とされていた、成獣蝸牛のSLFのギガオームシールに初めて成功した。現段階ではWhole cell modeで記録される膜電流はまだ不安定だが、次年度には酵素処理等の条件を最適化することでより多くのデータをとり、SLF膜電流の実測同定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【スライスパッチクランプ】 当初は、初年度にラセン靭帯の生スライス標本を作製し、脳スライスで行わるようなブラインドパッチクランプによってSLFの膜電流をスクリーニングする予定であった。しかし、成獣ラセン靭帯のコラーゲンマトリクスが想定以上に強靭で、条件設定に難渋した。高濃度の酵素処理によるマトリクス消化や、鏡視下の細胞選別を併用することで、成獣SLFのギガシールには初めて成功し、実験系は概ね確立できた。膜電流のスクリーニングは次年度に遂行する予定である。 【培養SLFのパッチクランプ】 初年度の進捗状況としては概ね予定通りである。ラット成獣の蝸牛から単離したSLF組織片を初代培養・継代した。培養SLFのパッチクランプ記録は、スライスパッチクランプと比べると安定しており、ナトリウム電流やカリウム電流を検出できた。SLFは蛋白発現パターンの異なるI-Vのサブタイプがあるが、培養SLFのマーカー蛋白の免疫染色による分類では、ほとんどがtype I, IIIであった。
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Strategy for Future Research Activity |
【パッチクランプ】 酵素処理等の条件最適化でスライスパッチクランプ記録の安定化を図り、SLF膜電流のスクリーニングを行う。見出された電流について、イオン選択性や薬物感受性のプロファイリングを進める。未確立のtype II, IV, Vを含めた培養SLFを用いることで、詳細な解析が効率的に可能である。 【in vivo 細胞内記録】 生きた動物の蝸牛で、SLFの細胞外(外リンパ腔)を潅流し、微小電極でSLFの細胞内記録を行うとともに、内リンパ液高電位(EP)も同時記録する。イオンや薬物に対する反応を比較し、パッチクランプで得られた電流が、本当に生きた蝸牛でもSLFやEPに反映され、聴覚に寄与しているか、を検証する。 【イオンチャネルの分子同定】 パッチクランプで得られた電流の特性を、既知の各種イオンチャネルと比較して候補分子を絞る。スライスおよび培養SLFにおける目的蛋白の発現を免疫染色法で確認し、分子同定を行う。
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Research Products
(5 results)