2018 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌におけるセンチネルリンパ節の微小転移に関する実態調査
Project/Area Number |
17K16934
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
小針 健大 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 助手 (40795085)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | センチネルリンパ節 / 微小転移 / 予防的頸部郭清術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は先行研究における頭頸部癌のセンチネルリンパ節ナビゲーション手術(Sentinel Node Navigation Surgery, SNNS)導入例を対象に転移リンパ節の状況を後ろ向きに確認して予後を比較解析し、センチネルリンパ節(Sentinel Node, SN)を微小転移とみなした場合に頸部郭清の省略が可能かを後ろ向きに検討し、SNNSで同定した微小転移例の頸部郭清の省略を、画一的な頸部郭清術を行う治療法と比較検証する前向き無作為比較試験を準備することを目的としている。 本研究では当学で実施した先行試験1「口腔・咽頭がん患者を対象としたセンチネルリンパ節生検による頸部リンパ節転移予測に関する研究」に登録された、早期口腔癌患者31例を対象として、SNNSで同定したSNについて、AE1/3 cytokeratin染色を行いSNの病巣を再評価し、転移の有無、転移巣の大きさと予後情報を統合し、予防的頸部郭清を省略しうるSNの微小転移の大きさについて検討した。 初回手術でSN転移陰性とされた25症例ではHE再染色およびAE1/3染色を行い、SN転移陰性を確認した。 初回手術でSN転移陽性と診断された6例では、すべてAE 1/3染色でもSNに腫瘍細胞の転移が確認でき、手術を拒否した1例を除く5例で頸部郭清術が施行されていた。6例中、非SNリンパ節転移、術後頸部再発ともに認めなかった症例は2例で、SN転移巣最大径はそれぞれ1.76㎜、10.0㎜であった。非SNリンパ節転移陰性で術後頸部再発を認めた例は2例で、SN転移巣最大径はそれぞれ2.03㎜、4.43㎜であった。一方、非SNリンパ節転移が陽性で、術後頸部再発を認めなかった例は1例で、SN転移巣最大径は0.57㎜であり、非SNリンパ節転移および術後頸部再発のどちらも認めた例は1例でSN転移巣最大径は2.18㎜であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2000年から2008年の期間に当科に入院しセンチネルリンパ節生検を施行された、臨床的にリンパ節転移を認めない早期口腔癌症例31例(T1N0M0 : 15例、T2N0M0 : 16例) を調査対象とし、31例全例で同定されたすべてのセンチネルリンパ節に対し、HE再染色およびAE1/3 cytokeratin染色を行った。センチネルリンパ節の転移の有無の確認、転移があった場合の転移巣の大きさの計測および患者予後等の臨床情報との統合も終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
乳癌の領域において、SN転移はその最大径によってマクロ転移(2mmを超える)、微小転移(0.2㎜~2㎜まで)、isolated tumor cell(ITCs)(0.2㎜以下)に分類されており、日本乳癌学会診療ガイドラインでも、SNの転移が微小転移であると確定できた場合には、臨床病理学的因子を考慮し、適切な術後療法を加えることで腋窩リンパ節郭清を追加する意義は少なく、腋窩郭清を省略することが勧められている。 今回、本研究で対象とした早期口腔癌症例31例中SN転移を認めた6例のうち、SN転移巣最大径が最小の0.57㎜の症例でも非SNリンパ節転移を認めていた。このことから、本研究の結果からのみ、乳癌領域の微小転移の大きさを参考に微小転移の定義付けを行うことは困難と考えられた。 今後、先行研究「早期口腔癌に対する臨床第2相試験口腔癌に対するセンチネルリンパ節ナビゲーション頸部郭清術の研究」より検討した、「口腔癌に対するセンチネルリンパ節ナビゲーション頸部郭清術における転移巣の大きさの検討」(2018年10月11日第20回SNNS研究会学術集会にて報告)で得られた組織病理学的情報と臨床情報を統合し、症例数を増やした上で、予後と転移病巣の大きさの関係を解析し予防的頸部郭清術を省略可能と考えられる微小転移の定義を試みる。 本研究により、早期口腔癌におけるセンチネルリンパ節の微小転移が定義された場合、SNNSを行い微小転移とみなされ頸部郭清術を省略し経過観察とすると、SNNSを行わずに経過観察とするときの転移・再発のリスクを減じ、さらには頸部郭清術を一律に行うときの合併症や後遺症のリスクを減じることができる可能性があると考えられる。 最終的には、SNNSで同定した微小転移例の頸部郭清の省略を、画一的に頸部郭清術を行う治療法と比較検証する前向き無作為化試験を準備することを目標としている。
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Causes of Carryover |
現時点で、当初の研究計画で予定していた過去の研究で採取されたセンチネルリンパ節標本のHE染色、サイトケラチン染色の再染色、および予後情報との統合は終了している。また、本研究の成果に関して関連学会での報告も行った。一方で、本研究の結果からのみでは症例数が少なくセンチネルリンパ節の微小転移の大きさについて定義を行うことは困難であり、今後本研究と関連する研究結果との情報の統合も必要と考えられ、その結果に関して関連学会での報告も行う予定である。そのため、次年度も学会参加のための旅費や論文作成の際の校正費用として使用予定である。
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