2017 Fiscal Year Research-status Report
制御性T細胞に着目した頭頸部癌における抗腫瘍免疫の解析と免疫治療への応用
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17K16937
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
的場 拓磨 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 臨床研究医 (40790712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 頭頸部癌 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
耳鼻咽喉・頭頸部外科に所属し頭頸部癌の手術に携わっているため、サンプルの収集に関しては新鮮な状態で収集することができ、数としてもおおむね順調に集まっている。頭頸部癌の症例や、その対象となるリンパ節腫脹の症例につき、今までのところ23例のサンプルを収集できている。主に手術で摘出された腫瘍もしくはリンパ節からリンパ球を採取し、フローサイトメトリーやRNAシークエンスにより解析を行っている。免疫学教室においてノウハウを教わりながら行うことができるため、現在までのところ、フローサイトメトリーは22例、RNAシークエンスは4例に対して解析を行うことができている。 その結果、頭頸部癌の原発腫瘍や頭頸部癌の転移のあるリンパ節においてFOXP3陽性の制御性T細胞の割合が多いことが確認できた。また、制御性T細胞において発現している様々な分子についても同時に解析を進め、特徴的な分子発現を確認できている。 また、RNAシークエンスを行うことで、制御性T細胞と、通常型T細胞との遺伝子発現の差を見出すことができた。遺伝子解析を行った4例についてはいずれも似通った遺伝子発現パターンを示しており、再現性の高い信頼できるデータであるといえる。 現在までである程度まとまったデータを得ることができたので、それらをまとめて論文化し、また学会発表などもできるように準備を進めている。 今後はさらにサンプルの収集を続け、同様の解析を行って結果の信頼性を高めるとともに、他の免疫担当細胞に着目した解析も進めていくよう準備をしている。また、マウスを用いてヒトの頭頸部腫瘍の増殖にリンパ球が影響するかどうかを確認するという実験も計画中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自身は名古屋市立大学病院の耳鼻咽喉科に属しており、なかでも頭頸部外科を専門としているため、頭頸部癌の手術の日程を把握し、時には手術に参加をすることが可能である。そういった立場から、順調に頭頸部癌やリンパ節腫脹のある症例において同意を得て新鮮なサンプルを入手することができている。また、同大学の免疫学教室において研究を行っているため、制御性T細胞の研究に精通した研究者から意見やノウハウを聞くことができる。フローサイトメトリーについては、抗体の量や組み合わせに関して今までの経験から至適な組み合わせなどを教えていただくことができるため、何度も予備実験などをして条件を決めていく過程をかなり短縮することができている。染色時間や緩衝液の種類などについても同様である。そのためフローサイトメトリーの結果は非常に安定した結果が得られており、信頼できるデータを出すことができている。さらに、大阪大学からも解析機器を使用させていただくなどの協力を得ており、多くの分子発現を同時に解析するなど、貴重なサンプルに対して無駄のない効率的な解析をすすめることができている。RNAシークエンスに関しても、大阪大学では遺伝子解析の専門家に指導をうけながら解析を進めることができるため、再現性のある信頼性の高いデータを出すことができている。およそ月に1回のペースで大阪大学へ出張して研究をすすめており、制御性T細胞のフローサイトメトリーやRNAシークエンスに関してはある程度まとまったデータを集めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、頭頸部癌や比較となるサンプルの収集はおおむね順調にできており、そこからリンパ球を採取することも問題なくできている。また、主に制御性T細胞に関してはフローサイトメトリーによる解析も順調に進んでおり、データが蓄積されてきている。今後も引き続きサンプルの収集を続け、解析数を増やしていく。さらに、制御性T細胞のみではなく、他の免疫担当細胞についてもフローサイトメトリーで解析を行い、制御性T細胞との関連を見出すことができるのではないかと考えている。また、サンプルの種類を増やし、様々な癌腫や治療介入の違いによって免疫担当細胞の表現型に違いがでるかどうかを比較していくことも検討している。 遺伝子解析については、今までのところ4例についてRNAシークエンスを行っており、再現性の高い遺伝子発現のデータが得られている。これらのデータについて色々な角度から解析を進め、いくつか制御性T細胞に特徴的な遺伝子発現パターンを見出しているが、さらに解析を進めるとともにタンパク発現においても確認を行ったり、フローサイトメトリーの結果と照らし合わせて特徴を決定づけていく必要がある。今後集めるサンプルについても同じように解析をすすめるか、あるいは他の免疫担当細胞に着目した遺伝子発現解析を行っていくかを検討中である。 その他にマウスを用いた実験も進める予定である。マウスにヒトの頭頸部腫瘍を移植し、同一症例から採取したリンパ球も移植することで腫瘍の増殖に変化がみられるかどうかを確認することで、腫瘍増殖に対するリンパ球、特に制御性T細胞の影響を確認することが可能である。耳鼻咽喉科にはマウスにヒトの頭頸部癌を移植している研究者がおり、また免疫学教室にもマウスの実験に精通した研究者がいるため、協力を得ながら実験を進める予定である。
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Causes of Carryover |
名古屋市立大学の免疫学教室において主に研究を進めており、また大阪大学に機器を貸していただくなどの協力を得られたため、新たな機器や抗体、チップ、グローブなどの消耗品の購入にあてる予定であった資金がある程度節約できたことで次年度使用額が生じた。また、非常に興味深い結果が出ており、もう少し内容をつめて論文にまとめてからでないと学会で発表すべきではないと考え、当該年度には海外への出張を行わなかったため、旅費があまりかからなかったことも理由となる。 次年度の使用計画としては、他の免疫担当細胞に着目した解析も準備しており、それに要する抗体などの試薬を購入することにあてる。遺伝子解析を進めるにあたっても引き続きRNA精製やシークエンスに費用を要する。遺伝子解析の結果から、タンパク発現の解析など新たに解析すべき内容も追加される。また、結果をまとめ、論文を作成するため英文校正費なども必要となる。論文化した後には国内外の学会で発表するため旅費にも使用する。さらに、マウスを用いた実験に関してもマウスの購入、飼育費の他、新たな実験系を立ち上げるための初期費用も必要となってくる。
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