2017 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺の結節性病変に対する細胞診による分子生物学的診断法の開発
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17K16951
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
手島 直則 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (10749146)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 甲状腺腫瘍 / 細胞診 / 診断 / 治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦では、甲状腺癌の罹患者数は増加傾向である。甲状腺腫瘍の診断方法は穿刺吸引細胞診が一般的であるが、他部位の腫瘍と比較して正診率が低く診断精度の向上が急務である。特に細胞診で鑑別困難な症例や濾胞性腫瘍症例では、術前細胞診での本研究では、甲状腺結節性病変の細胞診検体を用いた甲状腺腫瘍における術前診断の際に、低侵襲で簡便な穿刺吸引細胞診の正診率向上が急務となっている。穿刺吸引細胞診において正診率を上げるための特異的マーカー候補としてCyclin D1蛋白に着目した。Cyclin D1は細胞分裂周期に関わり、細胞分裂を促進する蛋白で、頭頸部扁平上皮癌、甲状腺癌など染色体11q13の領域の増幅が認められる癌種においてCyclin D1遺伝子が存在しており、同遺伝子の高発現についても報告されている。従来、細胞増殖能の指標となる蛋白質としてはKi-67がよく知られているが、Ki-67は特異度が高いものの感度が低いため細胞診に用いるためには不適当である。今回の目的として甲状腺の穿刺吸引細胞診にCyclin D1免疫染色を行い、それが腫瘍性病変の同定に寄与する新たな特異的マーカーとなりうるか、良悪の鑑別と腫瘍亜型の識別が可能かを検討する。更にこれまでの臨床予後データから、診断確定・方針決定を行う新規システムを確立する。同時に細胞診検体から遺伝子変異を解析することで良悪性、組織型が鑑別可能かを検討する。また、再発腫瘍やリンパ節転移・遠隔転移を起こした症例を解析することで予後因子の探索も行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
103例の甲状腺腫瘍摘出標本を用いてcyclin D1免疫染色の有用性について検討した。各組織型においてcyclin D1の陽性率を検討しImage Jを用いて陽性率について検討した。また各組織診での悪性腫瘍、腫瘍性病変の陽性率についてカットオフ値を決定した。同様にKi67の染色性、陽性率を同様に検討し、Cyclin D1陽性率を比較して感度、特異度共にKi67よりも高いことが判明した。 次いで、術前細胞診での鑑別困難例、濾胞性腫瘍症例の診断へ寄与するかを目的とした細胞診検体によるCyclin D1免疫染色について検討を行った。31例で検討を行い腫瘍性病変の染色性および細胞診診断への有用性を確認し、細胞診と組織診の診断結果に大きな乖離がみられないことも確認した。最後に細胞診を液状保存検体としてDNAの抽出を試みた。技術的にDNA抽出も可能であり、抽出したDNAをPCRで増幅し次世代シークエンサーによるターゲットシークエンス、遺伝子解析が可能であることも確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究結果を集積、解析し論文化し英文誌への投稿を準備している。また、本検討の結果からはCyclin D1免疫染色を用いた甲状腺腫瘍の病理学的診断における有用性は示唆されているので、外来での穿刺吸引細胞診検査に応用することで、術前診断の正診率向上が得られないかを検討する。余剰検体を液状検体として保存することで遺伝子変異の解析も可能となり、両者を組み合わせることで腫瘍性病変の有無、良悪性や組織亜型の鑑別を網羅できる可能性がある。外来検査としての実現性と有効性や次世代シークエンサーの使用をふまえた臨床応用の実現性を模索していく。手術を行った場合とcyclin D1を用いた細胞診を元としたアクティブサーベイラランスを行った場合を比較した医療費コストの優位性についても検討を行っていく。また、予後と臨床データの照合を行うことにより、前向きに穿刺吸引細胞診の検体で診断確定・方針決定を行う甲状腺結節性病変の新しい診断システム確立を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度、甲状腺結節性病変に対してcyclin D1染色を行い、結節性病変におけるcyclin D1染色の有用性を確認した。また手術検体から採取した液状保存細胞診検体からDNAを抽出して次世代シークエンサーを用いてBRAFなど、腫瘍に特異的な遺伝子変異が同定可能であることも確認している。当初の予定より、検体数が集まらず、検体の測定費用が安価で済んだため繰越金額が生じた。繰越額は次年度以降、検体数は増加を見込んでおり、検体の測定費用に充てる予定である。研究結果を今後、論文化して英文誌への投稿を行う予定である。投稿に際して投稿費や英文校正費などが必要になり同費用について計上するとともに、英文誌査読後の追加実験などの指示があった場合、試薬や物品を追加で購入する可能性がありその予算も計上している。最終的に英文誌に論文がアクセプトされた後に国内外の頭頸部癌、甲状腺腫瘍に関連する学会で学会発表を行う予定としており、その旅費も計上している。
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