2017 Fiscal Year Research-status Report
正常眼圧緑内障モデルマウスにおける熱ショック蛋白質を介した網膜神経保護
Project/Area Number |
17K16953
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木嶋 理紀 北海道大学, 大学病院, 医員 (20443947)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 眼細胞生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障とは眼圧の上昇や網膜循環障害などを背景に視神経障害が進行していく慢性疾患である。初期には自覚症状なく進行し、やがて視野が次第に欠損してきて、ついには失明に至る。緑内障はわが国では第1位、世界でも第2位の中途失明原因であり、最近の調 査では40歳以上の約5%に発症し、70歳以上ではその有病率が10%を超えることが分かった。現在、日本の潜在患者数は500万人とも推定され、今後さらなる高齢化社会の到来と共に、患者数の増加が予想される。本症には眼圧が高値を示すものと、眼圧が正常範囲内にある正常眼圧緑内障があるが、わが国では約70%が正常眼圧緑内障で占められている(Iwase A et al. Ophthalmology. 2004)。 緑内障の病態としては、網膜神経節細胞がアポトーシスを起こすことで、徐々に視野が欠損してやがては失明へ至ると考えられているが、その詳しいメカニズムは不明である。現在の臨床治療は、眼圧を低下させることで緑内障の進行を抑制することを目的としているが、正常眼圧緑内障の中には、眼圧が充分低いにもかかわらず、症状が進行していくものが含まれる。そのため今後は直接的に網膜神経節細胞のアポトーシスを抑制する治療が期待されている。 熱ショック蛋白質(HSP)は熱などのストレスによって発現が誘導される分子シャペロンであり、構造変化を来した異常蛋白の形状を元に戻し、その凝集を阻害するのみならず、プロテアソームにおける変異蛋白の分解を促進することで、抗アポトーシス効果を示すと考えられている。神経細胞にβアミロイドを過剰発現すると神経細胞死が引き起こされるが、HSP70を神経細胞に強制発現させると、神経毒性を軽減することができる(Magrane J et al.J Neurosci. 2004.)。 そこでHSPをターゲットにした新しい緑内障治療を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一時的に、動物実験室でマウスに感染症が発生して実験の中断を余儀なくされた時期もあったが、現在は感染症の終息が確認されつつある。そのため、実験スケジュールの進行に遅れが生じてしまった。 現在までに、網膜虚血再灌流実験をスクリーニングとして行い、① Riluzole投与と② Eupalinolide B投与について、その網膜神経節細胞保護効果を確認している。また①②の投与によって熱ショック蛋白も発現していることも確認済みである。 スケジュールの遅れはあるが、実験そのものは当初の計画通り進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
③ アスパラガスからの抽出物であるETAS投与による網膜神経節細胞死抑制 についても網膜虚血再灌流モデルで検討したのち、今後、動物飼育室の安全性が確保された時点で、ノックアウトマウスを受け入れて、次の亜急性実験へと移行する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)一時的に動物実験室でマウスに感染症が発生し、実験の中断を余儀なくされたため予定より研究費が残存した。 (使用計画)29年度に施行予定であった実験計画や30年度に行う予定の実験費用(細胞賠償試薬、抗体、遺伝子発現解析試薬、プラスチック消耗品など)に使用する。
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