2018 Fiscal Year Research-status Report
正常眼圧緑内障モデルマウスにおける熱ショック蛋白質を介した網膜神経保護
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17K16953
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木嶋 理紀 北海道大学, 大学病院, 医員 (20443947)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 緑内障 / 網膜神経節細胞保護 / 熱ショック蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障とは眼圧の上昇や網膜循環障害などを背景に視神経障害が進行していく慢性疾患である。初期には自覚症状なく進行し、やがて視野が次第に欠損してきて、ついには失明に至る。特に近年は高齢化社会が進むにつれて、患者数も増加の一途をたどっている。しかし現在のところ、薬剤等を使用して眼圧を下降させて、間接的に視神経を保護する治療には限界もあり、直接的に視神経を保護あるいは再生させるような治療の開発が、世界中で望まれている。 緑内障の網膜神経節細胞保護による治療の可能性を検討するため、熱ショック蛋白の系を活性化させる薬物を用いて細胞死の抑制効果を調べている。 マウスに植物であるヤバツイ由来のEupalinolide B、アスパラガス抽出物であるETASをあらかじめ腹腔内投与した。これらの薬剤は全身的に熱ショック蛋白の発現を上昇させることが分かっている。実験は以下に示す網膜虚血再灌流モデルを用いて検討している。マウスの眼より135.5cm(100mmHg)の高さになるようにつり上げておき, 33G の注射針を前房内に刺入し固定する。45分後に注射針を抜き、眼圧を低下させることにより網膜を再灌流させ、24時間後に眼球を摘出した。 眼球をパラフィン固定し、網膜切片を作成。網膜神経節細胞を鋸状縁から対側の鋸状縁までカウントして神経細胞死を評価した。また、マウス上丘より、4%Fluoro-Goldを注入し、7日後に、眼を摘出し網膜フラットマウントを作製し、逆行性に染色された網膜神経節細胞の密度を調べたところ、Eupalinolide B、ETAS、ともに網膜組織に熱ショック蛋白の発現していることが免疫染色で示され、さらにこれら二種類の薬物は容量依存的に網膜神経節細胞保護を示すことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験手技に不慣れなため、当初は網膜虚血再灌流がうまくいかなかった。しかし、周囲のサポートもあり、今では安定したモデルを作製できるようになり、問題はおおむね解決している。
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Strategy for Future Research Activity |
HSP70についてウエスタンブロッティングを行い、リアルタイムPCRでmRNAを測定し、定量的評価を行う。またcaspase-3、caspase-9について activity assayを行いアポトーシスの抑制効果について検討する。さらに正常眼圧緑内障モデル動物のグルタミン酸トランスポーター(GLAST)の機能異常をもつ遺伝子欠損マウスを用いて、網膜神経節細胞保護効果を調べていく。
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Causes of Carryover |
実験が思うように進まず、今年度の経費が思ったよりも少なかった。今後の研究の進行につれて、試薬や動物購入費用がかかるものと思われる。
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