2017 Fiscal Year Research-status Report
開放隅角緑内障における新規病態マーカーの戦略的探索
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17K16969
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
川本 由紀美 鳥取大学, 医学部, 助教 (00759920)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | IL-8 |
Outline of Annual Research Achievements |
開放隅角緑内障(OAG)のマーカーを探索するため、これまで蓄積していたOAGの患者101名より得られた前房水を用いてプロテオーム解析に着手した。OAG 69例, 新生血管緑内障32例、さらに正常者(白内障患者)100例を対象にサイトカインプロフィールの探索を行った結果、緑内障眼においては interleukin(IL) -1α, IL-1β, IL-2, IL-4, IL-8, IL-23など多くの炎症性サイトカイン群の有意な増大を認めた。とくに緑内障か正常者であるかの判別をロジスティック回帰で行ったところ IL-8上昇が最も高いオッズ比を示し、これに IL-2, IL-10, IL-4, MCP-1が続いた。次に眼圧の上昇機序を探るため 術前眼圧と相関するサイトカイン群を調べたところ、IL-1β, IL-2, IL-5, IL-6, IL-8, IL-10, IL-12, IL-13, IL-15, IL-17, IFN-γ, TNF-α, MCP-1, VEGFなど多くのサイトカインが術前眼圧との高度な相関を認めた。次に視野障害と相関するサイトカインを検証した結果、IL-8は有意な相関を示した。 以上の結果より、眼圧上昇や視野障害に関連するマーカーあるいは治療標的候補としてのケモカインとしてIL-8およびケモカインシグナルの重要性がうかびあがってきた。そこで緑内障手術前のIL-8およびその他のサイトカインレベルが緑内障手術の予後に影響するかをコックス比例ハザードモデルで検証した。その結果、IL-8は緑内障手術後の予後不良に有意に寄与していることが判明してきた。さらに眼圧上昇機序にIL-8がいかに関わっているのかを検討するため、一般化構造方程式モデルを用いて術前眼圧、術前IL-8、術前MCP-1, 術前視野、と緑内障手術予後(生存期間)の関連性の数理モデルを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述の解析により患者正常者を含めた201例の前房水サンプルを用いたプロテオーム解析により緑内障関連変動因子群を抽出することができた。しかしながら、これまでの解析結果からは眼圧と関連する因子群はサイトカインのみに絞っても多岐にわたることが判明してきた。そこで今回の検証から抽出されたIL-8を含む経路が実際にマーカーとして有用であるのか、あるいは治療標的としても利用可能であるのかはさらなる検証の必要がある。数理モデルの結果によれば、高眼圧がIL-8上昇をきたし、IL-8上昇が手術予後を悪化させるシナリオの妥当性が高い。この数理モデルの結果に基づき、新たな仮説を立てることとした。 一方、二次性開放隅角緑内障の原因疾患としてのウイルス感染がいかなる寄与を示すかの解析も行った。その結果、前房水を採取できたウイルス感染症において、眼圧上昇に寄与するウイルス群の中で最も重要度の高いものは単純ヘルペス、水痘帯状疱疹ウイルスに加え、サイトメガロウイルス感染であることが判明した。そこでサイトメガロウイルス感染をモデルとして線維柱帯がいかなる障害をうけ眼圧上昇をきたしえるのかを、培養ヒト線維柱帯細胞を用いて解析をすすめつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体は、解析を始める上でのバックボーンである。とくに開放隅角緑内障の分子病理は多岐にわたり、それぞれの分子機序に応じて解析をすすめていく必要がある。そこで臨床検体の詳細な解析から開始して、仮説あるいはモデルを作成しその検証のプロセスを経てより妥当性のある責任因子群候補の同定、及びさらなる検証としてすすめていく。このためには、引き続きネットワークモデル、構造方程式モデルを含めた数理モデルを利用して 仮説の構築、責任シグナル経路の同定を行っていく予定である。とくに、数理モデルの妥当性の改善には解析サンプル数の増大が必須であり、さらなる臨床サンプルの組み入れを行うことによりより詳細かつ確度の高いモデルが構築可能である。これまで構築した数理モデルによれば 眼圧上昇に伴って発現が亢進するマーカー、線維柱帯の収縮、線維 化をきたす因子はそれぞれ別にモデル化する必要がある。このような仮説に基づき in vitro及び マウスモデルでの検証へとすすめていく予定である。
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Causes of Carryover |
産育休のため約半年間研究を進められなかったので次年度使用額が生じた。次年度持ちこし分は、今年度予定していたヒト培養線維柱帯細胞を用いた検証実験等に使用予定。
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Research Products
(1 results)