2018 Fiscal Year Research-status Report
開放隅角緑内障における新規病態マーカーの戦略的探索
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17K16969
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
川本 由紀美 鳥取大学, 医学部, 医員 (00759920)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 緑内障 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度による実績により、開放隅角緑内障の分子マーカー群として(IL-1β, IL-2, IL-5, IL-6, IL-8, IL-10, IL-12, IL-13, IL-15, IL-17, IFN-γ, TNF-α, MCP-1, VEGF)など多くのサイトカインが術前眼圧との高度な相関を認めた。これらの分子群が実際に診断マーカーにとどまるのか、あるいは予後予測にかかわる因子群であるのかを検証した。緑内障手術後の予後にいかなる影響するかをまったく機序の異なる二つの緑内障手術、すなわち線維柱帯切開術、線維柱帯切除術にわけて検討した。その結果、術後、眼圧再上昇をきたすまでの期間に有意に関連していたのは、IL-8と線維柱切除後の予後であった。一方、IL-8は線維柱帯切開術後の予後不良との有意な関連は認めなかった。また、マーカーとして特に有意な関連を示したもう一つのケモカイン、MCP-1は、術前眼圧に関連して上昇していたが、手術予後への直接的な影響はみとめなかった。以上より、IL-8は、流出路の閉塞やおそらくリモデリングに直接影響し、MCP-1がそれを修飾しているのではと想定された。そこで、これらのケモカインがヒト線維柱帯細胞にいかに影響しえるかの検討にうつった。ヒト培養線維柱帯細胞の分子応答をさぐるため、MCP-1やIL-8に対する機能的応答性の検討を始めた。また、線維柱帯炎をおこして眼圧上昇を来しやすい刺激としてサイトメガロウイルス感染があることを報告した。このためサイトメガロウイルス感染刺激後の包括的転写応答をRNA sequencingの手法を用いて解析した。以上の解析の中で線維柱帯の感染刺激においてIL-8が分子ネットワークの中でも高度に有意な関連を示すことを見いだし、さらなる解析をすすめつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前房水サンプルを用いたプロテオーム解析により緑内障関連変動因子群を抽出しScientific Reports誌 2018に報告、受理された。そこで、次に今回の前房水サンプルより得られた結果が、分子病理的に妥当性があるのか、さらに治療標的としてつかえる可能性があるのかに関しての検証を始めた。また、これらの分子群の上昇が、既知の緑内障関連遺伝子や薬剤、シグナル分子といかに関連するのかをまず、in silicoにおけるネットワークモデルを用いた解析に着手した。ネットワークモデルにくみいれる対象疾患として3つの機序を検討対象とした。まず、ミオシリンをはじめとする既報告すべての緑内障関連遺伝子群をまず対象とした。次に、二次性眼圧上昇が線維柱帯レベルでおこりやすい代表疾患としてステロイド緑内障がある。そこでステロイドと線維柱帯関連分子群を次の解析対象とした。三番目の対象疾患として、炎症性二次性緑内障としてサイトメガロウイルス感染とした。 まず、それぞれの3つの対象疾患群毎に該当分子、遺伝子をデータベースより網羅的に探索した。次に、ヒト線維柱帯細胞にさまざまな刺激をあたえたときの包括的転写応答をRNA sequenceの手法で取得した。次に IL-8や MCP-1といった分子群がこれまでの既報告のシグナル機序に以下に関与しているのかの検証をはじめた。このためには、まずin vitroにおける細胞収縮、アクチン、チューブリンなど細胞骨格制御に加え、細胞ストレスにかかわる分子経路の検証にうつりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、臨床検体の解析により、分子病理解析を開始するにあたっての仮説構築に必要なデータを取得することができた。今後は、仮説をたてて、その検証にうつっていく作業となる。しかしながら今回抽出できた IL-8やMCP-1が実際に病態のマーカーにとどまるのか、あるいは、それに関連したより上流のregulatorが実際の新規治療薬に関連するのか明らかではない。上流のregulatorとしてたとえば、既存の治療薬がすでに利用可能である経路もこれまでの解析から判明している。そこで、治療ターゲットの描出をめざし、実際にさまざまな分子病態仮説を線維柱帯細胞モデルを用いて順に検証していく。これにもとづき、さらに仮説を修正していく必要がある。このためには既報告分子ネットワークを常にアップデート修正を繰り返しながら検証をすすめていく。現在、当初まったく想定していなかった治療薬剤(X)も候補にあがってきている。これらの効果判定もふくめて マウスモデルを用いた解析へ順にすすめていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度利用目的の物品は購入してしまったため、来年度に有効利用するため次年度に繰り越した。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] High interleukin-8 level in aqueous2018
Author(s)
Ikuyo Chono, Dai Miyazaki, Hitomi Miyake, Naoki Komatsu, Fumie Ehara, Daisuke Nagase, Yukimi Kawamoto, Yumiko Shimizu, Ryuichi Ideta & Yoshitsugu Inoue
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: -
Pages: 1-11
DOI
Peer Reviewed / Open Access