2017 Fiscal Year Research-status Report
網膜血管新生に対する時計遺伝子の関与と、VEGF関連眼疾患予防への応用
Project/Area Number |
17K16972
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楠瀬 直喜 九州大学, 薬学研究院, 特任助教 (10725964)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 体内時計 / 網膜 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの遺伝子の発現には、約24時間を1周期とする変動 (概日リズム) が認められ、そのリ ズムは「時計遺伝子」と呼ばれる約20種類の転写因子群によって制御されている。近年、免疫機構をはじめとする生体防御や異物排泄に関与する遺伝子の多くが、時計遺伝子の制御下にあり、その発現に概日リズムが認められることが明らかになってきている。また、時計遺伝子の改変動物では、生体防御機構の破綻にともない、ガンや肥満・高血圧といった多くの疾患の発症頻度・重症度が高まることが示されている。本研究の目的は、網膜内のVEGF発現が時計遺伝子によって制御されているか否かを明らかにし、 不規則な生活に伴い生じる「概日リズム異常」がVEGF関連眼疾患の発症リスクを高める要因となる可能性を示すことである。そのために、VEGF関連眼疾患のモデルマウスおよび培養細胞を用い実験を行う。まずはじめに、VEGF関連眼疾患のモデルマウスとしてOxygen-induced retinopathy (OIR) マウスを作成することとした。OIRマウスは、既報に従い、新生児マウスを75%酸素条件下で5日間飼育し、その後通常酸素条件下に戻すことで相対的な低酸素環境とすることで作成した。その結果、OIRマウスの網膜において既報と一致してVEGFの発現が一過性に上昇することが確認できた。また、OIRマウスの網膜における時計遺伝子の発現を評価したところ、VEGFと同じタイミングで一過性に発現が上昇する遺伝子が見つかった。この時計遺伝子は、がん細胞におけるVEGFの発現制御に関わると報告されているため、網膜においてもVEGFの発現制御に何らかの影響をおよぼしている可能性が考えられる。その詳細については現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新生児マウスを相対的な低酸素環境に置くことで網膜におけるVEGFの発現を上昇させるOxygen-induced retinopathy (OIR) マウスを作成した。OIRマウスの網膜において発現が変化する時計遺伝子を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見出した時計遺伝子のVEGF発現変化におよぼす影響を明らかにする。実験には網膜におけるVEGF産生細胞の一種であるミュラー細胞の株化細胞MIO-M1を用いる。
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Causes of Carryover |
平成29年度末に参加した学会の旅費・参加費を支払う予定だったが、処理が遅れたため未使用額が生じた。
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