2019 Fiscal Year Research-status Report
The effects of DNA damage response to retinal regeneration in mammalian retina
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17K16989
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
蒋池 かおり 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90792408)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ミュラーグリア / フォスファチジルセリン / Rac1 / 増殖 / 貪食 / グリオーシス / 網膜再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、ラットにおけるMNU誘発視細胞傷害モデルでは、網膜傷害後のミュラーグリア(MG)が一過的な増殖と同時にDNA損傷応答を呈し減少することを報告しており、平成29年度には、MGの減少はアポトーシスによるものであること、MNUにより変性した視細胞をMGが貪食している可能性があることを見出した。 近年、MGの貪食能獲得と網膜再生が関連している可能性について複数の総説で論じられているため、平成30年度にMGの貪食能獲得について精査した結果、MGではフォスファチジルセリン(PS)を認識することで増殖、変性視細胞貪食のどちらをも引き起こしている可能性を見出した。 前年度の成果を発展すべく、本年度では研究計画の通り、貪食の過程においてPSの認識に引き続いて起こるファゴサイティックカップ形成に必須の因子、Rac1の発現について検討した。その結果、MGは変性視細胞貪食時にRac1を発現しており、Rac1の活性化を阻害するとMGの増殖と、変性視細胞貪食能は抑制された。また、研究計画を発展させた追加の実験として、PSの認識とRac1の活性化阻害によるグリオーシスへの影響を解析した所、グリオーシスマーカーであるGFAPの発現が抑制されることを見出した。 以上の結果から、ラットのMNU誘発視細胞傷害モデルでは、MGが変性視細胞のPSを認識することで網膜の変性を感知し、引き続きRac1が活性化することで増殖、グリオーシス、変性視細胞の貪食が引き起こされていることが示唆され、申請者らは令和2年1月30日に上述の結果をScientific Reportsにて報告した。今後も引き続き、MGの増殖を制御するメカニズムを解明していくことで網膜の再生を活性化する手法を探索し、網膜再生医療に寄与することを目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施予定であった、「ミュラーグリアの貪食能獲得と増殖応答への関与をさらに検討するため、貪食の過程においてフォスファチジルセリンの認識に引き続き起こることが知られている、異物や残骸などを細胞内へ取り込む際において細胞骨格の再構築に必須な因子であるRac1の発現について検討する。ミュラーグリアにおいて変性視細胞貪食時にRac1の発現が確認できた場合、その活性化を阻害することによってミュラーグリアの貪食と増殖応答への影響を解析する。」という研究計画において、先述の通りMGは変性視細胞貪食時にRac1を発現しており、Rac1の活性化を阻害するとMGの増殖と変性視細胞貪食能は抑制されるという結果を得た。さらに、研究計画を発展させた追加の実験として、PSの認識とRac1の活性化がグリオーシスを引き起こす可能性についても見出した。MGの増殖は網膜の再生において必須条件であり、MGの貪食能獲得と網膜再生が関連している可能性について複数の総説で論じられているにも関わらず、今までにこれらについて明らかにした報告はなく、申請者らが世界で初めて報告した。これらの成果を勘案して、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度の研究計画であった、「ミュラーグリアでのRac1の活性化と増殖応答への関与」についての解析は先述した通り、Rac1活性化の阻害剤を用いることでミュラーグリアの増殖と視細胞貪食能が抑制されたことから、ミュラーグリアの貪食能獲得によるRac1の活性化が増殖応答へ関与している事を示唆する結果が得られ、計画通り研究を推進できたと言える。令和2年度では令和元年の成果をさらに発展すべく、以下の方針に則り研究を推進する。すなわち、ミュラーグリアの貪食能獲得についてさらに検討するため、変性した視細胞を貪食する過程で活性化されるパスウェイについて解析する。具体的にはフォスファチジルセリンの受容体を明らかにすべくRT-PCR法等を用いて一般的なフォスファチジルセリンの受容体として報告されているTAM(Tyro3/Axl/Mer)受容体、TIM1、3、4、インテグリン等の発現について検討する。
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Causes of Carryover |
以下の理由により329,159円の次年度使用金が発生した。・体調不良により自宅静養を要したため。・論文の執筆に想定以上に時間を要したため。・引越しのため機器や実験台の使用に制限がかかったため。次年度使用金は、分子生物学に必要な酵素、抗体、消耗品および実験用動物の購入に使用する。
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