2017 Fiscal Year Research-status Report
腸管の免疫細胞応答における腹腔鏡手術の低侵襲性の評価
Project/Area Number |
17K17000
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大島 一夫 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (20764880)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 実験系の確立 |
Outline of Annual Research Achievements |
内視鏡手術の低侵襲性を説明する分子生物学的な機構は解明する。手術後侵襲で上昇する炎症性サイトカインの関与がこれまで報告されてきたが、本研究では、炎症性サイトカイン量を規定する免疫応答、特に迅速な応答を特徴とする自然免疫応答に注目し、手術侵襲における自然免疫応答を検討する。特に、腸管内に数多く存在し、上皮細胞の生存維持、再生、組織修復に関与する3型自然リンパ球(ILC3)のような免疫細胞に着目して解析を行う。 実際には、マウスに開腹手術・腹腔鏡手術を模した侵襲を与え、その後の腸管や血液を採取し、免疫応答をフローサイトメトリーや遺伝子検査で評価する。 マウスはC57/ BL6J種で、イソフルランで全身麻酔導入し、侵襲操作を (a)腹腔鏡手術群: 腹部皮膚を小切開し、ヒト手術用の3mmカメラポートを挿入し、気腹装置で気腹し、その後一旦閉腹する。 (b)開腹手術群 : 腹部を正中切開し、全腸管を引き出したままで待機し、その後閉腹する。 (c)対照群 : 全身麻酔のみで腹部切開をおかず待機する。 の異なる3群に分けた。侵襲後に小腸を摘出し、EDTA-2Na、CollagenazeD、Percollを用いて腸管リンパ球をを一細胞レベルに分離し、選択的に摘出する。リンパ球は、固定液と各染色液を用いてフローサイトメトリーし、リンパ球分画を解析するようにした。 平成29年度は実際にマウスを使って開腹手術・腹腔鏡手術に準じた侵襲を与える上記実験モデルを確立した。また、今後の展開に向けた環境の整備を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マウスの腸管からリンパ球を分離し、フローサイトメトリーでリンパ球分画の同定やソーティングを行うための試薬や装置を整備した。また、気腹装置や二酸化炭素などを手配し、開腹/腹腔鏡に準じた侵襲をかけて行う実験系を確立した。マウスは実際に10匹以上を用いてリンパ球の分離・フローサイトメトリーまで行っており、標的である自然リンパ球の同定も行えている。 今後予定しているPCRや次世代シーケンサー解析への展開、結果を踏まえた腸管リンパ球欠損マウスや炎症性サイトカイン欠損マウスによる評価確認も、調整の見通しが立っている。 平成30年度はこの状況を基にデータを積み重ねればよい状況となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はPCRや次世代シーケンサー解析も展開し、マウスにおける自然リンパ球と侵襲の関係について知見を蓄積する。また、今後得られる結果によっては、腸管リンパ球欠損マウスや炎症性サイトカイン欠損マウスを用いて侵襲に対する免疫応答を評価確認する予定であり、その場合の実験施設や技術についても、見通しが立っている。 これらの結果は内視鏡手術のみならず全低侵襲性手術に対する生物学的基盤の解明に繋がり、患者QOLの改善に大きく貢献できる。
|