2017 Fiscal Year Research-status Report
バイオフィルムを取り巻く創傷環境の解明および制御効果の高い治療法の開拓
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17K17009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高木 尚之 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30569471)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 創傷治癒学 / バイオフィルム / 慢性創傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度はマウスおよびヒトでの創部バイオフィルムの評価を行った。 ①バイオフィルムの同定:マウスおよびヒト創傷から採取した組織を凍結固定し、薄切後、live and dead染色で生きた細菌の集塊を染め、同時にConcanavalin Aにて多糖類を染色し、共焦点のレーザー走査顕微鏡にて二重染色で同時に染まる部位をバイオフィルムとして同定することができた。現在この手法は確立している。 ②創部細菌数の解析:マウスおよびヒト検体から採取した組織をホモジネートし、上清を血液寒天培地、NAC選択寒天培地に接種し細菌数を定量化した。創部の細菌数が1×105-6個以上の細菌数が存在しない状態ではバイオフィルム形成は認めなかった。ヒトの創部細菌は黄色ブドウ球菌が圧倒的に多く、ブドウ球菌、緑膿菌存在下でのバイオフィルム形成を確認している。 ③基礎疾患とバイオフィルム形成:マウスで糖尿病マウス、Jα18KOマウス(NKT細胞欠損)では、創部の細菌数が多く、バイオフィルムも形成しやすい傾向にあった。また、形成したバイオフィルムも顕鏡下での最大の厚みは大きくなる傾向にあるようであった。今後、ヒト検体での糖尿病患者、免疫抑制患者などの検体でも確認していく予定である。 ④陰圧閉鎖療法によるバイオフィルム抑制効果:局所陰圧閉鎖療法においては交換時にはバイオフィルム形成を認める症例が多いのに対し、洗浄型の局所陰圧閉鎖療法では細菌数のコントロールとあわせてバイオフィルム形成も抑制する場合が多かった。洗浄型の局所陰圧閉鎖療法はバイオフィルム抑制により有効である可能性がある。上記が現在までの研究実績である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね予定通りに実験、解析を行っている。特に、創部細菌数とバイオフィルムの関連、基礎疾患の有無によるバイオフィルム形成の厚みなどにも違いがみられる可能性が示唆される。今後も症例を増やして検討していく。 これらの平成29年度の結果をもとに平成30年度に予定していた実験、解析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では各種治療法によるバイオフィルム抑制効果を中心に検証を行う。具体的には、ワセリン投与、スルファジアジン銀投与、陰圧閉鎖療法、低出力衝撃波における比較検討を続けて行なっていく。最終的には、ヒト検体での統計解析が行えるまでの症例数を増やしていくようにする。ヒト検体においては症例が偏ることがあり、症例を逃さないように注意して進めていく予定である。 併せて、平成29年度においては創部組織、浸出液からのサイトカイン、ケモカインの解析が十分には行えておらず、こちらも症例集積と併せて優先して進めるようにする予定である。これらのデータをあわせて解析し、より良いデータが得られるよう努力していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額には、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成30年度請求額と合わせ、平成30年度の遂行に使用する予定である。
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