2017 Fiscal Year Research-status Report

敗血症における乳酸生成はアドレナリンが誘導するのか？

Research Project

Project/Area Number	17K17058
Research Institution	Sapporo Medical University
Principal Investigator	文屋尚史札幌医科大学, 医学部, 助教 (50721586)
Project Period (FY)	2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords	乳酸 / アドレナリン / 嫌気性代謝 / ストレス反応
Outline of Annual Research Achievements	敗血症における血中乳酸値の上昇は、死亡上昇と有意に相関する独立した予後予測因子である。これまで敗血症における乳酸値の上昇は嫌気性代謝によりもたらされると説明されてきたが、この嫌気性代謝による乳酸値上昇には疑問がある。これまでの報告から、敗血症時には組織の酸素分圧の低下が証明されていないにも関わらず乳酸値の上昇が認められており、嫌気性代謝、すなわち酸素の運搬の低下だけでは乳酸値が上昇するという証明に十分ではない。一方で、乳酸値上昇には生体内アドレナリン分泌によるβ刺激が関与している可能性が示唆されている。アドレナリンは副腎で生成され分泌される。このため副腎を摘出すればアドレナリンの分泌が生じなくなり、乳酸値の上昇が軽微であると考えられる。本研究の目的は「敗血症の独立した予後予測因子である乳酸上昇は、これまでいわれてきた嫌気性代謝によるものでなく、ストレス反応としてのアドレナリン分泌による誘導される」ことを証明することである。現在は適切なモデルを確立させることに取り組んでいる。理想的なモデルとしては、開腹を行い、両側の副腎を摘出し、酸素動態を観察を一定にするために、人工呼吸管理を行った上で、大腿の筋肉を露出し筋肉の乳酸値を持続的に計測するマイクロダイアリシスを挿入、その近位部に針電極を挿入し酸素分圧を測定する。外頸静脈からの静脈路に加え、大腿動脈に動脈ラインを挿入し手技は一通り終わりとなる。開腹下での両側副腎摘出、人工呼吸管理のみでラットにとっては相当の侵襲となるようで、敗血症を誘導する前にかなり弱ってしまい、より低侵襲な方法でのモデル作成を目指している段階である。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 4: Progress in research has been delayed. Reason 本研究は副腎より生成されるアドレナリンにより敗血症誘導時の乳酸値を確かめる研究である。副腎からのアドレナリンが血中に放出されないようにするために、副腎を切除しアドレナリンの生成がない群と副腎をそのままにした状態のラットを用い研究を行っている。現時点での第一の問題点は、副腎摘出のために開腹施行し左右両側の副腎を切除するのであるが、左副腎は受動が用意であるため摘出が用意であるが、右副腎は肝の重要血管と距離が近く、切除時に出血をきたすことが多い。これに外形静脈を確保し、気管挿管施行し人工呼吸を開始すると、敗血症誘導前に死亡、もしくは極めて弱ってしまい、研究データを取るだけの十分時間の生存を得ることができていない。第二の問題点は、乳酸値の問題である。マイクロダイアリシス法を用い、大腿の筋で持続的な乳酸値の上昇を観察している。しかし、マイクロダイアリシス法では透析の原理を用い、乳酸値を計測しているわけであるが、この方法では乳酸値が下限値となってしまい、検査装置の下限となってしまう。このため実際にはわずかな乳酸値の変動が起こっていると考えているが、その変動が下限値以下となってしまっており理想的な計測に至っていない。
Strategy for Future Research Activity	理想的なモデルの構築を急いでいる。各々の手技は確立したものの、すべての手技が入る段階でラットが弱ってしまい、敗血症の誘導に耐えられていない。当初、酸素の状況をより確実にするために気管挿管を施行し人工呼吸管理を施行することとしていたが、気管挿管と人工呼吸管理。特にラットの人工呼吸管理は気道が細く、また陽圧が少し強く加わっただけでもラットが死亡してしまうことがある。このためマスク代わりのノーズコーンを使用し酸素＋吸入麻酔イソフルランを吹き流しにし行ってみる予定である。これにより気管挿管、人工呼吸管理の侵襲が減りモデルが安定化することを期待している。透析の原理を用いたマイクロダイアリシス法での乳酸の検出方法もより低値で観察できる方法を模索している。まず、現在使用している乳酸分析器とはことなる分析をいくつか試してみる。次に透析液による希釈を最小限にするために、マイクロダイアリシスの速度をより遅くしてみて濃度の上昇を図ることでこれらの問題に対応することを計画している。
Causes of Carryover	最適なモデルの構築そのものがうまくいっていない状況であり、実験器具購入や追加を行う状況とはならなかった。現在の研究施設にある機材でおおむね研究ができている、最適なモデルにたどり着けば研究資器材購入を行う予定としている。学会やそれに伴う旅費も、発表可能な結果がまだ得られていないため、使用していない。副腎を摘出したラットで各計測が可能になった時点で、予定している酸素分圧の機器を購入する予定としている。また乳酸値の計測のために、他の乳酸側的装置を購入することも検討している。