2019 Fiscal Year Research-status Report
ARDS,敗血症性多臓器不全に対する細胞種特異的なPHD2阻害による治療戦略
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17K17063
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
柏木 静 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (20596150)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度より上皮細胞全体ではなく,腸管上皮細胞特異的に低酸素誘導性因子を活性化させた上で敗血症に与える影響を検討する方針に変更を行った.本年度はそのためにVillin Cre-ERT2マウスの繁殖を開始した.Villin Cre-ERT2マウスをROSA26-CAG-EGFP/tDsRedマウスとかけ合わせた上で,タモキシフェンを投与したところ,腸管上皮細胞のみで強い赤色蛍光が観察され,腸管上皮細胞特異的な遺伝子組み換えが生じることが確かめられ,VHL flox/floxマウスとの掛け合わせ,繁殖を開始した. また,消化管内容物腹腔内投与による敗血症モデルの構築を行った.再現性高くモデルを作成するために最初に盲腸内容物をグリセリンとともに凍結保存したものを腹腔内に投与するモデルを作成した.保存された盲腸内容物中の細菌数は凍結・融解後も保たれており,腹腔内投与後の死亡率等についても再現性が高い敗血症モデルを構築することができた.さらに,このモデルにおいて肝障害マーカーである血漿中ビリルビン,さらに腎障害マーカーである血漿中Cystatin Cの増加を認めることが確かめられ,敗血症モデルとして成立していると考えられた.FITC標識デキストランを経口投与した上で,血中への漏出を測定したところ,盲腸内容物投与4時間後から腸管バリアの透過性が亢進する傾向が見られた. さらに,培養細胞系を用いて検討を行うためにヒト小腸細胞株であるCaco-2の半透膜上での単層膜培養系を構築し,VHL阻害剤の投与によりHIF-1αが増加することを確かめた.またサイトカインにより敗血症モデル動物と同様にバリア機能が低下する傾向があることを確かめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していたCK8プロモーターを用いたCreマウスでは思うような遺伝子組み換え効果が得られなかったこと,PHD2ノックアウトでは明らかな低酸素誘導性因子の増加が見られなかったことから,当初の予定を大きく変更し,Villin Cre-ERT2マウスとVHL flox/floxマウスの掛け合わせを行う必要が生じたため遅れが生じている.目的のマウスの繁殖が開始できており,疾患モデルも構築できてきていることから,遅れは生じているが今後一定の目標を達成できる状況になっていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
Villin Cre-ERT2マウスとVHL flox/floxマウスをかけ合わせたうえで,タモキシフェン投与後どの様なタイミングでどの程度の低酸素誘導性因子経路の活性化が生じるか検討を行う.その上で,前年度までに構築した盲腸内容物腹腔内投与敗血症モデルの腸管バリア機能,臓器障害,および生命予後に腸管上皮細胞特異的なVHLノックアウトがどのような影響を与えるのを明らかにしていく. 同時に,Caco-2培養細胞を用いた単層膜の実験系においてもVHL阻害による低酸素誘導性因子がバリア保護効果を示すか明らかにしていく予定である.
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Causes of Carryover |
ノックアウトマウスの構築において予想と異なる結果が得られたため,研究計画を大きく変更する必要があり,ノックアウトマウスが敗血症に与える影響の検討にまで至らなかったため次年度使用額が生じた.次年度使用額はマウスの飼育費やノックアウトマウスにおける腸管バリア機能,肝障害,腎障害マーカーの測定に用いる試薬,培養細胞実験に用いる試薬及び消耗品の購入費に充てる予定である.
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