2017 Fiscal Year Research-status Report
NETs形成抑制による敗血症性多臓器不全の新たな治療戦略
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17K17072
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
加藤 由布 藤田保健衛生大学, 医学部, 特別研究員 (50773412)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 敗血症 / 好中球細胞外トラップ (NETs) / 多臓器不全 / リコンビナントトロンボモジュリン(rTM) / DIC / 臓器障害 / NETosis |
Outline of Annual Research Achievements |
NETs(Neutrophil Extracellular Traps)は、血小板により活性化された好中球が放出するHietoneやDNA を含んだ網目状の構造物で、病原体を捕捉・殺菌し、病原体が全身に広がるのを防いでいる。その一方で、重度の感染症では、過度のNETs 形成が臓器不全の原因ではないかと考えられている。 本研究では、敗血症モデルマウスへの、リコンビナントトロンボモジュリン(rTM) 投与による各臓器内のNETs の抑制効果を検討した。 敗血症モデルマウスにおけるrTM投与群とrTM非投与群の肝臓、腎臓、肺を各経過時間(8、24、36時間)に採取し、免疫組織染色し、共焦点蛍光顕微鏡で画像を撮影後、画像解析ソフトによる定量的測定を行った。NETs の構成物質は好中球から放出されるDNAとヒストンであるため、DNA(DAPI)と抗ヒストン(Histone H2A)抗体、抗MPO(myeloperoxidase)抗体で染色し、各1次抗体に対応したAlexa Fluor 系の二次抗体で染色した。結果は、各臓器によって、NETs形成時期が異なることがわかった。 当初、平成30年度に予定していた、敗血症患者における血中のNETs 形成量とrTM 投与の効果の検討を、医学研究倫理審査委員会の承認をすでに得ていたので、3例行った。結果は、病態によりNETsの発現時期に差異がみられた。 まだn数が少なく、統計学的に意義のある検討数に達していない為、現在も継続して基礎及び臨床サンプルの収集を行い、検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、ほぼ研究計画どおりに進行している。一部実現できなかった項目が課題として残っており、次年度の研究計画と並行しながら進めていく。平成30年度に採取予定であった敗血症患者のサンプルについても、すでに数例のサンプル採取が出来ており、次年度以降の研究計画にも大幅な変更は必要ないと考えていることから、概ね順調と考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの各臓器のNETs の定量的測定は、共焦点顕微鏡Opera Phenixで撮影後、付属のイメージ解析ソフトウェアHarmonyを用いて定量する計画であったが、臓器の画像が不鮮明で評価が難しい。次年度は、凍結切片ではなくパラフィン切片を作製する。切片をさらに薄く切削するとことにより、鮮明な画像を取得し、定量的解析を行う。 ヒトの血液サンプルのNETs の定量的測定は、Gavilletらが2015年に発表したフローサイトメトリーを用いた定量法(Am J Hematol. 2015 (12):1155-8)についても適用が可能かどうかを検討し、測定可能であれば測定系に加える予定である。NETsの定量法は確立されたものがないので、迅速かつ正確な方法を確立し、今後の臨床応用への展望を考えている。 次年度は主に、敗血症患者にrTM 製剤を投与することにより、NETs 形成抑制効果があるかを検討する。rTM 製剤の投与タイミングや抗炎症作用などを明確にできれば、臨床の現場において、新たな治療戦略をもたらしうると考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は、顕微鏡を用いた実験が主である。共同利用施設にある既存の共焦点顕微鏡を使用した。当初の予定と異なり、本年度までは移行期間ということで、顕微鏡の利用料が発生なかったため、予定より支出が抑えられた。次年度以降は、利用料が発生するので次年度の研究費に持ち越した。
次年度は、組織切片作製のための試薬、免疫染色用の抗体・試薬・器具、ヒトサンプル回収のための採血管・好中球分離試薬を適宜追加購入する。NETs定量的測定の新たな試みとして、フローサイトによる定量法を行うため、フローサイト用抗体・試薬・機器使用料を当初の計画に加えて計上する。学会発表のための国内旅費、英文論文の校正・校閲料、印刷費も必要である。
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Research Products
(1 results)