2017 Fiscal Year Research-status Report
肥大軟骨細胞より骨芽細胞への分化転換におけるRunx2の役割
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17K17087
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
坂根 千春 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 特任研究員 (40792578)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 発生・分化 / 軟骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
四肢、脊椎、肋骨、頭蓋底等の骨格は、軟骨内骨化によって形成される。軟骨内骨化では、まず間葉系細胞が凝集し、軟骨原器が形成され、II型コラーゲンを産生する未熟軟骨細胞へと分化する。未熟軟骨細胞は増殖するとともに、骨幹部では成熟しX型コラーゲンを産生する肥大軟骨細胞になる。肥大軟骨細胞はさらに終末期肥大軟骨細胞となり、軟骨基質は石灰化し、軟骨周囲から血管が侵入する。血管とともに軟骨周囲の間葉系細胞が侵入し、骨芽細胞へと分化、軟骨は骨幹部より骨へと置換されていく。これまで、終末期肥大軟骨細胞はアポトーシスで死滅していくと考えられてきたが、最近、一部の細胞は骨芽細胞に分化転換することが示された。 Runx2 ノックアウト(KO)マウスは、骨芽細胞が存在せず、軟骨内骨化も阻害され、出生直後に死亡する。軟骨細胞の後期分化は阻害され、軟骨内骨化によって形成される骨格の多くは未熟軟骨細胞によって形成されている。すなわち、Runx2は、骨芽細胞分化及び軟骨細胞後期分化に必須な転写因子である。しかし、Runx2 KOマウスの一部の骨格(脛骨、橈骨)の軟骨細胞は、Runx3との機能重複のため終末期肥大軟骨細胞まで成熟しており、骨幹部は石灰化しているが、軟骨への血管侵入は全く認めない。 そこで、Runx2を肥大軟骨細胞特異的に欠失させ、軟骨内骨化のプロセスにおいて、Runx2が軟骨への血管侵入に必要であることを証明することにした。肥大軟骨細胞特異的にCreを発現するCol10a1 Creトランスジェニック(tg)マウスをRunx2 floxマウスと交配し、肥大軟骨細胞特異的にRunx2を欠失させたRunx2コンディショナルKO (cKO)マウスを作製した。Runx2 cKOマウスとコントロールマウスで、石灰化及び軟骨への血管侵入に差を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軟骨細胞特異的にCreを発現するCol10a1 Creトランスジェニック(tg)マウスをRunx2 floxマウスと交配し、肥大軟骨細胞特異的にRunx2を欠失させたRunx2コンディショナルKO (cKO)マウスの作製に成功した。さらに組織解析において、最終分化した肥大軟骨細胞層への血管侵入を野生型マウスと比較検討した。しかし、胎生16.5日の四肢の組織切片のH-E染色では血管侵入の明確な差は認めなかった。したがって、血管内皮細胞を染色する抗CD34抗体を用いた免疫組織染色で血管侵入を詳細に検討するとともに、VEGF発現の違い、軟骨細胞の最終分化段階の違い、アポトーシスの違いを詳細に検討する必要性が生じた。これらは、今後の研究の推進方策の記載の方法で、検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
胎生15.5日と16.5日のコントロールマウスとRunx2 cKOマウスの大腿骨パラフィン切片を用いて、抗CD34抗体を用いた免疫組織染色を行い、血管内皮細胞を検出、血管侵入のレベルに差があるか検討する。 胎生15.5日と16.5日の大腿骨パラフィン切片を用いて、抗VEGF抗体を用いた免疫組織染色を行う。さらに、抗Runx2抗体(核に染色)と抗VEGF抗体(細胞質に染色)で、二重免疫組織染色を行う。これにより、Runx2発現とVEGF発現が相関するか調べる。また、大腿骨、脛骨よりRNA及び蛋白を抽出、real-time RT-PCR法でVEGF mRNA、Western blot法でVEGF蛋白を調べる。 胎生15.5日、16.5日、新生児、6週齢、3ヶ月齢、6ヶ月齢、12ヶ月齢のマウスを調べる。胎生15.5日、16.5日、新生児は、骨格標本と組織解析を行う。6週齢以降のマウスは、マイクロCT、骨組織形態計測、組織解析にて調べる。 胎生15.5日と16.5日のコントロールマウスとRunx2 cKOマウスの大腿骨パラフィン切片で、軟骨細胞・骨芽細胞マーカー遺伝子のプローベを用いたin situ hybridizationを行う。また、Runx2抗体を用いて、免疫組織染色を行う。さらに、大腿骨、脛骨よりRNAを抽出、real-time RT-PCR法でこれらの発現を調べる。 胎生15.5日と16.5日のコントロールマウスとRunx2 cKOマウスの大腿骨パラフィン切片で、BrdUラベル・TUNEL染色を行うことにより、骨幹部領域の終末期肥大軟骨細胞、分化転換中の細胞、及び分化転換した骨芽細胞の増殖・アポトーシスを調べる。
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Causes of Carryover |
予想に反して、肥大軟骨細胞特異的にRunx2を欠失させたRunx2コンディショナルKO (cKO)マウスでは、野生型マウスに比較し肥大軟骨細胞層への血管侵入に明確な差を認めなかった。これが、間違いないか、多くのマウスで繰り返し確認したため、抗CD34抗体を用いた免疫組織染色や、抗VEGF抗体を用いた免疫組織染色、TUNEL染色の施行が遅れた。次年度に繰越した研究費は、抗CD34抗体、抗VEGF抗体、抗Runx2抗体、免疫組織染色の2次抗体、TUNEL染色キット、組織解析用試薬の購入及びマウス維持費に使用する。
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