2019 Fiscal Year Research-status Report
抗炎症作用を有する新規ビスホスホネートの歯科矯正用アンカースクリューへの応用
Project/Area Number |
17K17091
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
滝澤 愛子 東北大学, 歯学研究科, 非常勤講師 (70754969)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗酸化作用 / MPMBP / ビスホスホネート |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までは長管骨についてに解析を進めていたが、今回は単一の骨ながら複雑な機能、発生を示すラットの下顎頭について研究を行った。エストロゲン欠乏性骨粗鬆症(骨減少症)モデルラットに対してMPMBPの全身投与を行い、下顎頭に対する作用を検討した。実験には合計50匹の12週齢の雌性Sprague-Dawleyラットを用い、卵巣摘出術(40匹)または偽手術(10匹)のいずれかを施行した。24週目に卵巣摘出ラットをさらに4群に分け、MPMBP(投与量1.2,6.0,または30 mg/kg)または0.9%NaClを週1回、12週間皮下投与した。屠殺後、下顎骨と脛骨を採取し、micro-CT、組織学的および免疫組織化学的に解析を行った。micro-CT 解析により、MPMBPは卵巣摘出ラットの下顎頭ならびに脛骨骨幹端部および骨幹部の骨梁骨密度と機械的強度を用量依存的に増加させた。そして、脛骨骨幹端部の一次海綿骨の縦方向の成長を減少させ、骨幹部における皮質骨形成量を増加させた。さらに、一次海綿骨中のタイプIコラーゲンが増加した一方で、骨髄の脂肪細胞の数ならびにカテプシンK陽性破骨細胞の数は減少するという結果が得られた。MPMBPはエストロゲン欠乏性骨粗鬆症において、脛骨だけでなく下顎頭の脆弱化を改善し,骨形成を増強しうることが示された。この結果は潜在的に、補助療法として骨変性や他の骨関連障害の進行の改善に有用である可能性があることを示唆された。今後MPMBP の併用により歯科矯正用アンカースクリューの歯槽骨や顎骨との強固な接合を得ることができれば、脱落・炎症・疼痛などの重篤な副作用がなく、矯正治療成績が向上し、さらに患者のQOL を向上させ国民の口腔保健に多大な貢献をし得ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規ビスフォスフォネートMPMBPは,骨吸収抑制作用に加えて,抗酸化・抗炎症作用を有するメチルチオフェニルチオ基を有する非窒素含有ビスフォスフォネートであり、現在まで様々な観点から研究が進められた。 現在までは主に長管骨である大腿骨脛骨についてに解析を進めていたが、MPMBP の併用により歯科矯正用アンカースクリューの歯槽骨や顎骨との強固な接合を得る研究の前提として、単一の骨ながら複雑な機能、発生を示すラットの下顎頭について研究が優先と考えたためこちらを優先して行った。 顎骨でのメカニクスは複雑なため、長管骨と異なる反応がわかれば、今後歯科矯正用アンカースクリューの歯槽骨や顎骨での応用へつながると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
「歯科矯正用アンカースクリュー」は、歯槽骨または顎骨にミニ・スクリューを埋め込み、歯を動かすための絶対的固定源として用い、この方法により、従来の矯正治療と比べて、反作用により生じる望まない歯の移動が回避でき、また、今まで不可能とされた歯の移動が可能になったため、抜歯の必要性の減少、外科矯正治療の回避、治療期間の短縮、顎外固定装置が不要(患者の負担軽減)など、矯正治療領域に多くのメリットをもたらした。しかしながら、欠点として、動揺、脱落、周囲粘膜の感染・炎症にともなう腫脹・疼痛・粘膜の過形成などの合併症を持ち合わせている。現在までに研究において明らかにされているのは、解剖学的な植立部位、皮質骨の厚さ、歯肉の厚さ、力学的メカニクスとそれの植立後からの適用時期に関するものである。 単一の骨ながら複雑な機能、発生を示すラットの下顎骨への反応が明らかになり、長管骨と異なる反応がわかれば、今後歯科矯正用アンカースクリューの歯槽骨や顎骨での応用へとつながると考える。 MPMBP の併用により歯科矯正用アンカースクリューの歯槽骨や顎骨との強固な接合を得ることができれば、脱落・炎症・疼痛などの重篤な副作用がなく、矯正治療成績が向上し、さらに患者のQOL を向上させ国民の口腔保健に多大な貢献をし得る。
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Causes of Carryover |
2020年2月以降新型コロナの影響で一時研究がストップしてしまい学会等も行われなかったため。沈静化した際に研究再開致します。
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