Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質アルギニンメチル基転移酵素(Protein arginine methyltransferases; PRMT)5は, 種々の癌でPRMT5 の遺伝子発現およびタンパクの増加が示され, oncogenic な性格を有することが明らかになりつつある. 術前治療が行われずに外科的切除された頭頸部癌 59症例と上皮異形成9症例を用いて, 免疫組織化学的にPRMT5の発現を検討した.1)正常上皮では, 基底層付近の細胞質に弱陽性細胞を認めた. 2)上皮異形成では, 異型細胞の細胞質主体に正常上皮に比して強く染色される陽性細胞を認めた. HNCの胞巣中心部では, 細胞質に局在するのに対して, 浸潤先進部では核と細胞質に局在する傾向を認めた.3) 2)の結果を踏まえて, 口腔癌浸潤先進部の形態学的分類である山本・小浜(YK)分類を用いPRMT5の局在を, 連続標本を作製して詳細に検討した. 先進部が胞巣状を示すYK-1~3に相当す る23症例は, 22症例が細胞質に局在し, 1症例が核と細胞質に局在した. 一方, 紡錘形ないしびまん性を示すYK-4C, 4Dに相当する36症例では, 25症例が細胞質に局在し, 11症例が核と細胞質に局在した. すなわち, YK-4C, 4Dの症例では, YK-1~3の症例に比して有意に核と細胞質に局在した(YK1~3 vs YK4, p=0.0147). PRMT5が核と細胞質に局在する症例では, 上皮系マーカーであるCytokeratin (CK) 17とE-cadherinの発現が細胞質に局在する症例に比して, 減弱していた (p=0.0002, 0.0016). また, YK-4の症例でも同様に, CK17とE-cadherinの発現がYK-1~3の症例に比して減弱していた(p=0.0296, 0.0065).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PRMT5はHNCにおいて腫瘍発生の初期や浸潤増殖に重要な機能を担っていることが示唆された. また, PRMT5の細胞質から細胞質および核への局在変化は, 上皮系マーカーの減弱と相関を認めたことから, 上皮間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Translation; EMT)の関与が示唆された. Pathology International誌へ報告した.
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Causes of Carryover |
先述のように免疫組織学的にPRMT5とあるEMT因子との関連することが得られた. そのメカニズムを細胞株を用いて検討するために, PRMT5のノックダウンベクターを作製あるいは購入を検討していたが, 適当なベクターが得られなかったために研究費の一部を未使用とした. 最近, 共同研究にてすでに検証済みの新たなウイルスベクターを入手出来たため, それを調整し細胞に添加し, PRMT5のノックダウン実験を行う予定である.
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