2017 Fiscal Year Research-status Report
象牙質基質タンパク質 Phosphophoryn による抗炎症作用機構の解明
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17K17135
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小武家 誠司 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (50744794)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 象牙質 / Phosphophoryn |
Outline of Annual Research Achievements |
歯髄組織はう蝕により原生象牙質が露出した後も、反応性象牙質の形成や歯髄組織内の局所免疫応答によって、口腔内細菌や環境変化に対応し不可逆性炎症への移行を抑制している。象牙質・歯髄複合体に存在する多量な非コラーゲン性タンパク質の一つであるPhosphophoryn(PP)は象牙質の形成や石灰化に重要な役割を果たすことが知られており、これまで種々の組み換えPPタンパク質作製して、その細胞外基質石灰化や細胞接着・遊走に及ぼす影響を検討してきた。本年度はPPが抗炎症能を持つかを検討するため、歯髄の局所免疫に関与するマクロファージを用いて、組み換えPPタンパク質投与がLipopolysaccharide (LPS) 刺激下培養マクロファージからの炎症性サイトカイン発現を有意に抑制するかを検討し、そのメカニズムを解析することを目的としていた。ウェスタンブロッティング法による解析により、投与された組み換えPPタンパク質は、マクロファージlysateから検出された。しかしながら、細胞蛍光染色法では細胞質内で検出されず、細胞膜近傍に沿って集積していたことから、PPの多くはマクロファージに積極的に取りこまれることなく、細胞膜に結合していることが示唆された。また、組み換えPPタンパク質はLPSへ直接的に結合することがsolid phase binding assayで明らかとなり、LPS依存性の炎症性サイトカインシグナルおよびそれに続くTNFa産生量を減弱させた。また、PPの機能部位を同定するため、種々の組み換えPPタンパク質を、同様にマクロファージへ作用させると、PPの最も特徴的なアミノ酸配列である、セリン-セリン-アスパラギン酸の繰り返し配列を欠失させても、in vitroにおいてはその抑制能は惹起された。これら得られた結果から他のアミノ酸配列が抑制能発現に必須と考え、現在探索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究目的であった、THP-1細胞における投与rPPの局在検討並びに機能発現機序の解明およびPPが持つ特徴的な長いセリン-セリン-アスパラギン酸の繰り返し配列長と機能発現の相関の検討を行えたからである。さらには、セリン-セリン-アスパラギン酸の繰り返し配列以外の機能部位を同定するために、PPのN末端のみの分子量が小さい組み換えタンパク質の精製にも成功し、この組み換えタンパク質を用いてさらなら機能部位の同定を行えているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたin vitroでの知見を元に、in vivoにおいて、組み換えPPタンパク質が抗炎症作用を持つのかを、実験的歯髄炎モデルを用いて検討する。さらには、歯髄および象牙質に内在するPPの露髄時および歯髄受傷時の抗炎症効果を検討するため、Dsppまたはpp欠損マウス臼歯に実験的露髄面の作製を行う。さらにはマウスまたはラット実験的歯内療法歯へのrPP投与を行い、その抗炎症作用についても併せて検討を行う。これらげっ歯類の歯は小さく、画一的な手技で行うのが困難と予想される。その際には、敗血症モデルマウスを用いて、その致死性改善率や肝保護能を評価することで、抗炎症能を定量的に評価する予定である。
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Causes of Carryover |
組み換えDPPタンパク質産生細胞の成育が予想よりも早まったため、使用する液体培地の量が減少したため。次年度使用額は、引き続き液体培地の製作分の費用に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)