2017 Fiscal Year Research-status Report
広範囲の欠損修復を可能とする生体親和性良好な新規直接覆髄剤料の開発
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17K17136
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 晋一郎 九州大学, 大学病院, 助教 (30778866)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯髄幹細胞 / 修復象牙質形成 / 象牙質 / 歯髄 |
Outline of Annual Research Achievements |
Sema3Aによる歯髄幹細胞の象牙芽細胞分化誘導機序を明らかにするために、Sema3A存在下で培養した歯髄幹細胞においてSonic hedgehog (Shh)シグナルのターゲット因子として知られているGlioma-asociated oncogene homolog 1 (Gli1)の遺伝子発現が上昇するデータを得た。Gli1はこれまでに未分化な細胞に発現することが報告されている。申請者の研究グループは、過去の報告において、Sema3Aをヒト歯根膜細胞に過剰発現させると、歯根膜細胞が未分化な間葉系幹細胞の表現型を示すことを報告している。また歯髄幹細胞においても検討を進めており、Sema3A存在下で培養したヒト歯髄幹細胞において、SRY-box-containing gene2 (Sox2)やPOU domain class5 transcription factor1 (Oct3/4)といった多能性幹細胞に発現する因子の発現が上昇することを確認した。更に、ラット切歯歯根尖の未分化な間葉系幹細胞が集積している部位で、Gli1とSema3Aが高発現していることを確認している。これまでの研究成果で、Sema3Aが象牙質固有形態である象牙細管構造を伴った修復象牙質形成を促進したことから、Sema3Aは修復象牙質形成に加えて一次象牙質形成にも関与している可能性が示唆された。それに伴い、歯原性幹細胞の象牙芽細胞分化Sema3AおよびShhシグナル経路が関与している可能性が考えられた。 ラット上顎第一臼歯天蓋を除去し、幹部歯髄除去を行い洗浄後、Sema3Aを直接覆髄材として応用した結果、露髄面の完全な封鎖は認めなかったものの硬組織形成を認めた。今後、Sema3Aの濃度を考慮し検討を続ける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯髄幹細胞の象牙芽細胞分化に関与する細胞内シグナル経路としてShhシグナル経路が示唆された。象牙芽細胞分化にβ-catenin依存的経路もしくはShhシグナル経路が関与していることは報告されているが、その両者のシグナルネットワークについて検証した研究報告はない。ゆえに、慎重かつ詳細な検証が求められる。また、広範囲露髄モデルにおいて硬組織形成が認められた。これまで広範囲露髄部位に対して修復象牙質形成を促進し露髄面の封鎖を企図した報告はない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はShhシグナル経路が象牙芽細胞分化に及ぼす影響を検討するため、Shhのリコンビナントタンパクを用いた分化誘導実験に加え、受容体の遺伝子ノックダウン操作による検証実験を行う予定である。 広範囲露髄モデルにおいて、新規直接覆髄材として応用するSema3Aの濃度を上昇させ、修復象牙質形成効果を検討する。その後、Sema3Aの至適濃度を決定し、Sema3Aと抗菌剤の併用がう蝕原性細菌に及ぼす抗菌作用について検討する。
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Causes of Carryover |
広範囲露髄モデルの実験系の確立げ現在遂行中であり、細菌株の購入がまだ行えていないため。
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