2019 Fiscal Year Annual Research Report
顎口腔疾患の病態形成におけるエピジェネティックな制御機構の解明
Project/Area Number |
17K17147
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浮田 万由美 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (10778971)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 変形性顎関節症 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、分子レベルでのエピジェネティックな制御(環境による遺伝子制御)の観点からの病態形成メカニズム解明が行われるようになってきたが、顎口腔疾患への応用例は非常に少ない。関節軟骨吸収の病態形成にはエピジェネティックな制御を介した後天的な軟骨代謝異常が関係すると報告されているが、顎関節における報告は極めて少ない。そこで本研究では、下顎頭吸収におけるエピジェネティックな制御の関連を解明し、疾患の予防法・治療法につなげる事を目的とした。 健常マウス(8週齢)と高齢マウス(20ヶ月齢)から麻酔下に顎関節を採取し組織学的解析を行った。組織化学染色を行ったところ、高齢マウスでは関節軟骨の破壊など変形性顎関節症の所見が見られた。またエピジェネティクス関連タンパクとしてメチル化ヒストンについて免疫染色を行ったところ、高齢マウスの下顎頭の関節軟骨細胞では、メチル化ヒストンの発現減少が観察された。 マウス前軟骨細胞ATDC5細胞を用いて、メチル化ヒストンの発現現象は軟骨細胞にどのような影響を与えるか検討した。ヒストンメチル化阻害剤のchaetocinをATDC5細胞に添加して培養した。メチル化ヒストンの発現が現象すると、軟骨細胞の増殖が抑制され、アポトーシスが増加した。また、2型コラーゲンなどの軟骨組織産生に関わる分子の遺伝子発現が減少し、MMPなどの軟骨組織破壊に関わる分子の遺伝子発現が増加した。 以上のことから、変形性顎関節症では、関節軟骨細胞においてメチル化ヒストンの発現が減少すること、そしてメチル化ヒストンの発現減少は、軟骨細胞の増殖を抑制すること、軟骨代謝を負に促進することが示唆された。 変形性関節症とエピジェネティックな遺伝子制御については、これまでにDNAのメチル化やヒストンのアセチル化について報告がされてきたが、今回、顎関節の破壊にはヒストンのメチル化が関わる可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)