2017 Fiscal Year Research-status Report
過酸化水素光分解殺菌法の根面齲蝕への応用-新たな鉤歯齲蝕予防・治療技術に向けて-
Project/Area Number |
17K17151
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 康友 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (80789991)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 過酸化水素 / 過酸化水素光分解殺菌法 / ヒドロキシルラジカル / 殺菌試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
過酸化水素光分解殺菌法とは、3%過酸化水素に青色可視光線を照射することで生成されるヒドロキシルラジカルの強い酸化力を応用した殺菌法である。これまでに、本法は歯周炎に対する治療効果が実証されてきたが、齲蝕予防・治療への応用については十分な有効性および安全性の検証がなされていない。そこで本研究では、in vitro齲蝕モデルを構築し、軟化象牙質内に侵入した菌の殺菌試験を通して有効性の検証を行うとともに、in vivo試験における本殺菌法の歯髄刺激性に関する安全性を評価し、本殺菌法の齲蝕治療への適応拡大を図るための基礎的知見を得ることを目的とする。 本年度は、in vitro齲蝕モデルの確立を試みた。象牙質チップを齲蝕原因菌であるStreptococcus mutansを懸濁したスクロース含有の液体培地に浸漬し、37℃で嫌気培養を行い、象牙質の脱灰を引き起こし、齲蝕に近い状態をin vitro実験系において再現することを試みた。培養時間や菌の歯質に対する侵入および軟化象牙質の範囲などの評価を通して、in vitro齲蝕モデルを確立することが出来た。 加えて、このin vitro齲蝕モデルを用いて、本殺菌法の有効性の検証を行った。人工的に惹起させた齲蝕部位に対して、過酸化水素および光照射による処理を行い、殺菌効果を評価した結果、本殺菌法は高い殺菌効果があることが確認できた。さらに処理時間、光の出力(放射照度)および光の波長等の諸条件を変更し、同様の試験を行い、本in vitro齲蝕モデルにおける最適条件を見出した。 本殺菌法が歯髄組織に対し為害性があるのかについては次年度の検討課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
象牙質を用いたin vitro齲蝕モデルを確立できたことで、殺菌試験や、最適条件の探索が効率的に行うことが出来るようになった。また、可視光領域の波長で十分な殺菌効果が証明されたことから、新しい治療機器を開発しなくても、従来から歯科臨床で広く用いられているレジン充填用の光照射器を光源として転用できる可能性が示唆され、本殺菌法の技術的な難易度が低くなったことから、将来の臨床応用の可能性が現実性を増したと判断した。 今後は、臨床応用を考える上で安全性の検証が必要になってくるため、ラットを用いた動物実験を行い、本殺菌法の歯髄組織に対する為害作用がないかを組織学的に検証していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
歯髄刺激に関する研究では、ラットの上顎第一大臼歯近心面にラウンドバーにて窩洞を形成し、下記の通り処理を行い、窩洞はMTAセメントにて封鎖する;①過酸化水素+光照射、②過酸化水素+遮光、③純水+光照射、④純水+遮光、⑤無処理(窩洞形成あり)、⑥無処理(窩洞形成なし)。翌日、ラットを犠牲死させ歯髄の切片標本を作製し、歯髄組織に炎症性変化が惹起されていないかを確認する。必要に応じて免疫染色等の検証も行う予定である。加えて、組織切片作成過程の第一大臼歯のみを切り出した段階で、マイクロCTによる撮影を行い、齲蝕の範囲の評価を行う予定である。本殺菌法が歯髄組織に炎症を惹起されている可能性が示唆された場合は、より詳細な作用機構の解析を行い、前年度に設定した最適条件の変更も含め、臨床応用する際により安全性が担保される条件を検討したい。
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Causes of Carryover |
軟化象牙質に対するビッカース硬度試験が予定通りに進行せずに予備試験までしか行うことが出来なかったため、次年度本実験に使用する。
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