2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K17152
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加嶋 祐佳 日本大学, 歯学部, JSPS特別研究員(PD) (70778977)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | レーザー積層造形法 / 異方性 / 熱処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー積層造形(SLM)法で製作したCoCrMo合金の耐食性における異方性の有無と熱処理がおよぼす影響について評価を行った。SLM 造形まま材、造形後に熱処理として 750℃ 6 h、1150 ℃1 h、1150 ℃6 h の条件で行った熱処理料の計 4 種類の試料を準備した。各試料の造形方向に対し垂直な面と水平な面が試験面となるように切断し、それぞれx-z面、x-y面とした。比較のため、鋳造で製作したCoCrMo合金試料も準備した。続いてそれぞれの試料に対しアノード分極試験および溶出試験を行った。結果、分極曲線からは歯科鋳造材とほぼ同一であることが明らかとなった。全ての試料において明確な不働態域を示し、局部腐食を 生じず、約 0.7 VSCE以上の高電位域では過不働態の挙動を示した。この結果より、SLM 材は CCM 合金の本来の優れた耐食性を維持しており、γ相やε相といった相構成の比率や特定方向に結晶 が配向した集合組織の違いは、耐食性にほとんど影響しないことがわかった。一方、溶出試験結果ではSLM材は鋳造試料と比較し金属溶出量が有意に少なかった。これはSLM材では鋳造試料として造形時の密度が高く気泡が少ないことが影響したためと考えられる。SLM造形まま材では造形面により金属溶出量における異方性が顕著に確認された。これは造形面により溶融境界の出現量や性質が異なるためであると考えられる。一方熱処理により溶融境界が消失し、金属溶出量における異方性軽減に寄与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は耐食性の異方性軽減に寄与についての評価まで進めることができ、造形まま材では耐食性において顕著な異方性が見られることと、熱処理を行うことでレーザー照射時に形成される溶融境界が消失することで異方性が緩和されることや、熱処理時間が長くなることで結晶粒界の析出物がイオン溶出量を増大させること等、一定の成果を得ることができたが、出産と育休の影響で実験を進行できない期間もあり、当初の計画よりやや遅れがみられる。
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Strategy for Future Research Activity |
熱処理時間が長くなることによる析出物粗大化の耐食性に対する影響と、残留応力解放との関係性について評価を行う。また熱処理温度のみでなく熱処理時間にも着眼点を置いて、熱処理時間が組織構造に与える影響や再結晶化温度、再結晶化までの過程を時間ごとに追って詳細な組織構造の解析を行う予定である。さらに、レーザー積層造形法を用いて実際の臨床で用いられる補綴装置の製作を行い、適合精度の評価を行い、熱処理が適合性に与える影響の評価を行う。
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Causes of Carryover |
理由:業者に依頼して製作予定であった試料を一度サンプル品として無償で製作してもらったため。また出産による育休をとり研究計画においてやや遅れがあったため。 使用計画:今年度の未使用金と令和2年度の助成金を合わせて、CoCrMo合金金属粉末の購入と積層造形の業者への依頼費用に用いる予定である。
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