2017 Fiscal Year Research-status Report
新規アパタイトアイオノマーセメントAICの各種口腔内細菌に対する影響に関する研究
Project/Area Number |
17K17200
|
Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
西村 貴子 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (70468908)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | グラスアイオノマーセメント / ハイドロキシアパタイト / イオン徐放能 / 抗菌性 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は従来型グラスアイオノマーセメント(GIC)に多孔質球形ハイドロキシアパタイト(HApS)を添加し、機械的強度とフッ化物徐放量を同時に向上させることに成功させ、この新規材料をアパタイトアイオノマーセメント(AIC)と命名した。本研究はFujiIX GP EXTRA(IX-Ex)を基材としたAICの様々な物理化学的評価を行うことを目的としている。 ①試料の作製:IX-Ex粉末にHApSを添加し、試料を作製した。予備実験によりHApSの添加量は6wt%~18wt%の範囲とした。 ②AIC硬化体の機械的強度の測定と組織形態学的観察:練和24時間後に3点曲げおよび圧縮試験を行った結果、HApS12wt%添加AIC群はGIC群より曲げ強度が有意に高く、圧縮試験ではGICとAICに有意差を認めなかった。電子顕微鏡による試料断面観察では、AICのマトリックスにはHApSのナノ粒子が分散しており、マトリックス成分がHApSへ浸透し統合していることを確認した。 ③AIC硬化体から溶出する各種元素の定量:AIC試料を蒸留水に浸漬し、24時間毎にフッ素イオン濃度を測定した結果、HApS18wt%添加AIC群ではGIC群と比較して、30日間のフッ化物溶出累積量が20%増加していた。その他のAIC群においてもフッ化物溶出量が増加する傾向にあった。またHApS18wt%添加AIC群から溶出される各種ミネラル溶出量を高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-AES)を用いて測定した。アルミニウム、ケイ素およびリンのイオン溶出量は、GIC群のそれらと比較して有意に多いことが示された。 HApS添加により、強度とミネラルイオン溶出量の向上のどちらも同時に生じることが明らかとなった。優れた各種ミネラルの溶出は、様々なバイオアクティブ効果をもたらすと考えられ、細菌増殖抑制効果も高いことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今後の推進方策であるが、平成29年度よりAICの抗菌性の検討も行っており、予備実験においてATP測定法を用いて練和開始1時間後の試料におけるS.mutansに対する抗菌性を測定したところ、8wt%添加群を浸漬した菌液の発光量は、試料を浸漬しなかった菌液の発光量よりも有意に低く、制菌効果が示唆される結果を得ている。 このようにAICの試作、機械的強度および抗菌性の評価については順調に進展しており、引き続き平成30年度も継続して行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策であるが、平成30年度以降、抗菌性を考慮したHApSの至適添加率を決定し、歯垢付着抑制能の評価、歯周病原性細菌や口腔粘膜疾患を惹起する細菌に対する抗菌性の検討を行う予定である。平成29年度よりAICの抗菌性の検討も行っており、予備実験において制菌効果が示唆される結果を得ている。平成30年度よりさらなる積極的な研究の実施が可能となっている。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では、研究成果の保存のためのノートパソコンの購入を検討していたが、現在のところは既存のもので対応している。また平成30年3月に米国歯科研究学会 AADR への参加費用は平成30年度に請求を行うこととなっている。
|