2017 Fiscal Year Research-status Report
T細胞が抜歯窩治癒とオッセオインテグレーションに与える影響を解明する
Project/Area Number |
17K17212
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 知生 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (00756629)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | T細胞 / 骨代謝調節 / オッセオインテグレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,ヘルパーT細胞(Th)のサブセット(Th1/Th2/Th17)と制御性T細胞(Treg)の不均衡が骨粗鬆症などの代謝性骨疾患に関与することが報告されているが,T細胞関連分子が顎骨にどのような影響を与えるかは不明な点が多い.本研究の目的は,抜歯窩の治癒とオッセオインテグレーションにおけるT細胞関連分子を骨免疫学的に検索し,T細胞関連分子を基軸とした新規治療法の分子生物学的基盤を構築することにある. これまで申請者は,ラットを用いてチタン表面での骨芽細胞分化に対するIL-17の作用に関する基礎研究を行い,サイトカインであるIL-17が抜歯窩の組織修復の初期段階で関与すること,チタン埋入により産生が上昇すること,チタン 表面での骨芽細胞分化マーカーを有意に発現することを明らかにした.さらに,IL-17にはIL-17AからIL-17Fの6種のサブタイプの中で,IL-17Fが抜歯窩治癒の初期段階で骨芽細胞分化マーカーの発現増強を介して,オッセオインテグレーションに関わるチタン表面での骨芽細胞分化過程に関与する可能性を明らかにした. 平成29年度は,ラットのTh17機能亢進モデルを作製することを既報に従い試みたが,Th17の血中濃度は亢進値を示さなかった.Th17抑制モデルに関しては,既報よりTh17機能抑制にはJNK阻害剤を多発性硬化症の動物モデルとして知られる実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルに適用したものを用いる予定である.抜歯窩周囲組織の検索については,正常な免疫機能を有するラットにおいて上顎第一臼歯の抜歯,採血,屠殺,マイクロCT撮影,3次元的構造解析,抜歯窩周囲組織の切片作製まで終了し,現在組織形態学的解析を行っている.今後はTh17亢進・抑制モデルの確立と抜歯部硬軟組織からRNAを抽出後,T細胞関連分子の網羅的解析をマイクロアレイとプロテオーム解析にて行う予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は,まず,実験動物として用いるラットのTh17機能亢進・機能抑制モデルを作製することを試みた.既報において,アジュバント関節炎モデルを用いて関節リウマチにおける骨リモデリングの動態を検索していることから,Th17機能亢進にはラットに最も感受性の高いアジュバント誘発関節炎モデルを作製して使用し,菌体由来のアジュバントを足蹠皮内に投与し関節炎を誘発させることとしたが,結果はTh17の血中濃度は一定以上持続した亢進値を示さなかった.また,Th17抑制モデルに関しては,JNKの発現を低下させるとEomesoderminの発現が高くなりTh17細胞が減少するという既報から,Th17機能抑制にはJNK阻害剤を多発性硬化症の動物モデルとして知られる実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルに適用したものを用いる予定である. 抜歯窩周囲組織の検索については,Th17機能亢進/機能抑制ラットを使用するためモデルの確立を行えていないため,正常な免疫機能を有するラットの上顎第一臼歯の抜歯をし,術後 4,8,16週後に屠殺,マイクロCT撮影を行い抜歯窩周囲硬組織の3次元的構造解析を行っている.また手術時および屠殺時に採血を行い,血清中の急性期タンパクを測定することで炎症性疾患の有無を確認した.現在は,抜歯窩周囲のパラフィン切片を作製し,組織形態学的解析を行っている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,Th17亢進・抑制モデルの確立と,抜歯部硬軟組織を別々に分離採取して TRIZOL とフェノール・クロロホルム法で RNAを抽出後,T細胞関連分子の網羅的解析をマイクロアレイとプロテオーム解析にて行う.なお,標的分子が多岐にわたるため,マイクロアレイとプロテオーム解析は専門機関に委託する. Th17機能亢進モデルの作製については,計画書にも記載してあるコラーゲン関節炎やプリスタン誘発関節炎などの代替方法にてモデルの確立を行っていく予定である.また,Th17抑制モデルに関しては,JNKの発現を低下させるとEomesoderminの発現が高くなりTh17細胞が減少するという既報から,Th17機能抑制にはJNK阻害剤を多発性硬化症の動物モデルとして知られる実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルに適用したものを用いる予定である.その際,本研究の遂行で考慮すべきは,Th17の機能を亢進・抑制したモデルの作製である.両者の動態を比較した研究は極めて少ないため,本実験ではTh17の機能亢進は関節炎誘発モデルの惹起を,Th17機能抑制は実験的自己免疫性脳脊髄炎の治癒を確認することが必要だと考えている.
|
Causes of Carryover |
Th17亢進・抑制モデルの確立がうまくいかず,モデルの確立に必要な物品の購入を模索中であるところから発生した差額であると考えられる. これまでは,既報からTh17機能亢進にはラットに最も感受性の高いアジュバント誘発関節炎モデルを作製して使用し,菌体由来のアジュバントを足蹠皮内に投与し関節炎を誘発させることとしたが,結果はTh17の血中濃度は一定以上持続した亢進値を示さなかった. したがって今後は,計画書にも記載してあるコラーゲン関節炎やプリスタン誘発関節炎などの代替方法にてモデルの確立を行っていく予定である.また,Th17抑制モデルに関しては,JNKの発現を低下させるとEomesoderminの発現が高くなりTh17細胞が減少するという既報から,Th17機能抑制にはJNK阻害剤を多発性硬化症の動物モデルとして知られる実験的自己免疫性脳脊髄炎モデルに適用したものを用いる予定である.
|