2020 Fiscal Year Research-status Report
局所麻酔薬による線維芽細胞での神経成長因子発現増加が創傷治癒過程に及ぼす影響
Project/Area Number |
17K17239
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
松村 朋香 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (40527066)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 創傷治癒 / 局所麻酔薬 / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
創傷治癒の段階で線維芽細胞は筋線維芽細胞へと分化することが知られている。筋線維芽細胞は創傷治癒の過程で様々な増殖因子やケモカインを分泌し、治癒過程で重要な役割を果たす。これまで我々は創傷治癒過程における局所麻酔薬リドカインが及ぼす影響を調べてきた。創傷治癒の場で術後鎮痛を目的として長期投与された局所麻酔薬の非神経組織への影響を調べる一環としてリドカインの筋線維芽細胞への影響を調べた。 ヒト培養線維芽細胞にトランスフォーミング増殖因子(Transforming Growth Factor-β:TGF-β)を投与して、線維芽細胞から筋線維芽細胞へと分化させた。その筋線維芽細胞にリドカインを投与し、その影響を調べた。高濃度リドカイン投与後の筋線維芽細胞は線維芽細胞と同様、細胞萎縮が観察された。低濃度リドカイン投与後の筋線維芽細胞において、神経栄養因子(Nerve growth factor: NGF)の発現の変化について定量的PCRを用いて調べたが、有意な変化は見られなかった。 また、過去の研究より、線維芽細胞にリドカインを投与すると、アポトーシスが誘導され、細胞死が起きることが分かっている。TGF-βによって線維芽細胞から分化させた筋線維芽細胞にリドカイン投与で類似した細胞萎縮が起きた。筋線維芽細胞にリドカインを投与した際に起きる細胞萎縮は線維芽細胞と同じアポトーシスによるものではないのかを確認するために、Annexin Vでアポトーシスを、Ethidium homodimer IIIでネクローシスの検出を試み、筋線維芽細胞と線維芽細胞のリドカインに対する反応の違いについて調べた。まずは線維芽細胞での反応をみたところ、リドカイン投与した線維芽細胞でのAnnexin Vの発現が上昇した。これにより、リドカイン投与による線維芽細胞のアポトーシスが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言中の研究活動制限で、培養細胞を用いた研究計画が中断となったこともあり予定された実験を次年度に計画せざるを得なかったため、研究進捗状況に遅れが生じた。研究期間を延長し、予定された実験を進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度からの研究内容を継続させていくと同時に局所麻酔薬による線維芽細胞と筋線維芽細胞、それぞれに及ぼす影響の相違について調べていく。これまで、線維芽細胞に対する局所麻酔薬の影響について報告された研究では、局所麻酔薬により、線維芽細胞にアポトーシスが誘導されることが知られている。 また、局所麻酔薬は患者状態・術式に応じて局所麻酔薬の種類を使い分けられている。術後鎮痛を目的として持続投与される局所麻酔薬はロピバカイン等の長時間作用性局所麻酔薬が用いられている。今後はこれらの長時間作用性局所麻酔薬も用いて研究を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言中の研究活動制限で、培養細胞を用いた研究の遂行が困難となったこともあり研究進捗状況に遅れが生じ、実験の中断および実験計画の変更をせざるを得なかったため次年度使用額が発生した。 研究期間への延長が認められた次年度内に予定していた実験を進めていく。
|
Research Products
(3 results)